事故事例の詳細

事故概要

大学四年生が居酒屋において学友21名と共に懇親パーティを開催中、居酒屋の二階座敷の窓から表通りのアスファルト路上に転落し、死亡した。居酒屋の二階座敷の窓は、床上37センチメートルの高さであるにもかかわらず、手摺り(窓柵)がなかった。 



この事故の事故パターン

  事故のきっかけ 事故の過程 結果 詳細と留意点
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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 店舗・娯楽施設等  
場所 その他室内  
建築部位 窓  
障害程度 死亡  
事故にあった方 年齢  
性別  

判例の詳細

責任の所在
建物所有者・占有者(居酒屋経営者)
瑕疵・過失の有無
瑕疵あり

一般に飲食店において宴会用に顧客に座敷を提供して、ビール、酒等のアルコール類を供する場合、飲食店の経営管理に当るものは、顧客の中には飲酒のため通常の場合より運動能力、注意力等が減退するものがあるから、その者等の動作上における危険を防止すべき設備を講じておくべきである。

 本件の窓はその高さが床から36センチメートルで、そのままアスファルト道路に面しているのだから酔客の動作する二階座敷の窓としては転落の危険性があり、それを防止するためには右窓の床上からの高度を一段と高め、あるいは手摺りの設備等の必要があったと考えられるから、右窓の高度は安全性を欠いていたものであって、所有者・占有者である居酒屋経営者には、工作物の設置に瑕疵がある。
過失相殺
被害者は当時大学4年生ですでに成人としての注意力・判断力等が備わっていたのであるから本件のような飲食店の2階でパーティを行う場合窓から転落しないように自らも注意すべき義務があるとして、過失相殺(5割)している。

判例の解説

事案の概要
大学四年生が居酒屋において学友21名と共に懇親パーティを開催中、居酒屋の二階座敷の窓から表通りのアスファルト路上に転落し、死亡した。居酒屋の二階座敷の窓は、床上37センチメートルの高さであるにもかかわらず、手すり(窓柵)がなかったことから、被害者の遺族が建物所有者でもある居酒屋経営者に対し、工作物責任に基づく損害賠償を請求した事案である。

なお、居酒屋経営者は、事故発生二日後、右窓には横270センチメートル縦47センチメートルの鉄製の手摺りが取付けた。
裁判所の判断
裁判所は、

① 一般に飲食店において宴会用に顧客に座敷を提供して、ビール、酒等のアルコール類を供する場合、飲食店の経営管理に当るものは、顧客の中には飲酒のため通常の場合より運動能力、注意力等が減退するものがあるから、その者等の動作上における危険を防止すべき設備を講じておくべきであるとし、

② 本件の窓はその高さが床から36センチメートルで、そのままアスファルト道路に面しているのだから酔客の動作する二階座敷の窓としては転落の危険性があり、それを防止するためには右窓の床上からの高度を一段と高め、あるいは手摺りの設備等の必要があったと考えられるから、右窓の高度は安全性を欠いていたものであって、所有者・占有者である居酒屋経営者には、工作物の設置に瑕疵があると認定した。

③ ただし、被害者は当時大学四年ですでに成人としての注意力、判断力等が備わっていたのであるから本件のような飲食店の二階で懇親パーティを行う場合窓から転落しない

ように自らも注意する義務があるとして、過失相殺(5割)している。
事件番号・判例時報 昭和41年(ワ)990

 
裁判年月日 昭和43年8月28日 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 名古屋地裁 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者 利用客 
天候等の状況  
ID:169[mid:8]