事故事例の詳細

事故概要

本件は、スーパーマーケット店舗内で通路を歩行中の来店者が、下りの傾斜路で転倒し傷害を負ったとして、店舗経営者に対し、来店者が安全に通行できるよう配慮すべき注意義務を怠ったなどとして、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。 



この事故の事故パターン

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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 店舗・娯楽施設等  
場所 その他室内  
建築部位 スロープ  
障害程度   
事故にあった方 年齢 63歳 
性別 女性 

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
なし
・傾斜路の勾配やC.S.R.の最小値によれば、転倒事故を生じさせる危険性が特別大きいものとはいえないこと
・事故当時に傾斜路の表面が滑りやすい状況であったなどの特段の事情のない限り、店舗経営者には事故発生を予見することが可能であったとはいえないこと

判例の解説

事案の概要
スーパーマーケット店舗(以下「本件店舗」という。)内で通路を歩行中の来店者が、下りの傾斜路(以下「本件スロープ」という。)で転倒し(以下「本件事故」という。)傷害を負ったとして、店舗経営者に対し、来店者が安全に通行できるよう配慮すべき注意義務を怠ったなどとして、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。
裁判所の判断
1 本件店舗のような大規模小売店舗は、年齢、性別等が異なる不特定多数の顧客に店舗の用意した場所を提供し、その場所で顧客に商品を選択、購入させて利益を上げることを目的としているものであるから、店舗経営者は、一般的には、不特定多数の者を呼び寄せて社会的接触に入った当事者間の信義則上の義務として、不特定多数の者の日常あり得べき服装、履物、行動等を前提として、その安全を図る義務を負うものと解される。

2 本件スロープの勾配は、8分の1~10分の1の範囲内であり、本件スロープ上のC.S.R.の最小値は、清掃・乾燥状態で2か所は0.65~0.71、1か所は0.03~0.1の範囲内,湿潤状態で2か所は0.53~0.62、1か所は0.01~0,17の範囲内であったところ、これらの数値は、関係法令の定める基準に照らせば、本件事故のような転倒事故を生じさせる危険性が特別大きいものとは認められない。

3 上記のように転倒事故が発生する具体的危険が認められない本件においては、被害者の身体能力を考慮したとしても、本件事故当時に本件スロープの表面が滑りやすい状況であったなどの特段の事情のない限り、店舗経営者には、本件事故発生を予見することが可能であったとはいえず、安全配慮義務があったとか、その違反があったなどと認めることはできない。

4 なお、本件スロープには、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令が定める基準に適合しない部分も見受けられるが、そもそも本件店舗には同施行令は適用されないし、同法の趣旨等に鑑みれば、同施行令に違反することから直ちに安全配慮義務の存在及びその違反が認められると解することはできない。
本判決のポイント
事故現場の設備等の形状(傾斜路の勾配やC.S.R.値等)が法令上の基準をクリアしていれば、特段の事情がない限り事故発生の予見可能性はないとしたこと、バリアフリー法に違反する部分があるからといって直ちに安全配慮義務の存在及びその違反が認められると解することはできないとされたことに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 平成29年(ワ)第33386号 
裁判年月日 2019/1/17 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 東京地方裁判所判決 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2088[mid:]