事故事例の詳細

事故概要

本件は、映画館の来館者が、館内の非常通路内の階段で転倒して死亡したことから、被害者の遺族が、非常通路は通常有すべき安全性を欠いているなどとして、映画館の管理者に対し,工作物責任または安全配慮義務違反の不法行為に基づき損害賠償を請求した事案である。 



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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 店舗・娯楽施設等  
場所 その他場所  
建築部位 階段  
障害程度 死亡  
事故にあった方 年齢 50歳 
性別 男性 

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
瑕疵・安全配慮義務違反なし
・事故現場の非常通路は、日常的な使用に供することを予定したものではなく,使用される際には,映画館の従業員による避難誘導がされることが想定されていたものであること
・事故は上記想定されていた状況とは異なる状況で発生したものであること

判例の解説

事案の概要
映画館の非常通路(以下「本件非常通路」という。)内の階段で、来館者が転倒して死亡した事故(以下「本件事故」という。)につき、被害者の遺族が、非常通路は通常有すべき安全性を欠いていたなどとして、映画館の管理者に対し,工作物責任または安全配慮義務違反の不法行為に基づき損害賠償を請求した事案である。
裁判所の判断
1 本件事故の態様については,被害者が本件非常通路内の階段で転倒し,その後頭部を階段又は踊り場に打ち付けたことは認められるものの,その転倒が階段を上り又は下りのいずれにおいて起きたのかについては,証拠上いずれの可能性も否定することができず,本件事故全体の具体的な態様を確定することはできない。

2 本件非常通路は,地震や火災などが発生した場合のような非常時に、映画館がある建物の共用廊下に避難する際に使用することが想定される設備であって,日常的な使用に供することを予定したものではないこと,使用する際には映画館の従業員による避難誘導が想定されていたことなどからすれば、映画館が子供,高齢者,身体障がい者といった一定の配慮を要する者の来場も想定される施設であるとしても,本件事故全体の具体的な態様如何にかかわらず、本件非常通路が法的に求められる通常有すべき安全性を欠いていたものということはできない。

3 原告は、本件非常通路に設置されていた扉のドアノブはグリップが利かないものであったことなどを指摘しているが、この扉は日常的な使用に供することを予定したものではなく、かつ、通常の扉の開閉用のレバーやノブに比してつかみづらいものとは認め難いことなどからすれば、本件非常通路に瑕疵がないことと相俟って、映画館の管理者に安全配慮義務違反があったものと認めることはできない。
本判決のポイント
映画館のように子供や高齢者,身体障がい者といった一定の配慮を要する者の来場も想定される施設であったとしても、事故現場の設備等の本来の使用の在り方からすれば、瑕疵または安全配慮義務違反はなかったと判断されていることに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 平成28年(ワ)第33326号 
裁判年月日 2019/3/27 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 東京地方裁判所判決 
判示 映画館の非常用通路で、来館者が転倒して死亡した事故につき、非常用通路の階段が通常有すべき安全性を欠いていたとも,安全配慮義務違反があったともいえないとして、映画館の管理者の工作物責任・不法行為責任が認められなかった事例 
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2086[mid:]