事故事例の詳細

事故概要

本件は、マジックバーに客として訪れた原告が,店内でのマジックショーに参加しようとしたところステージに上がる階段を踏み外して転倒して負傷したとして、マジックバー店舗経営者に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。 



この事故の事故パターン

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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 店舗・娯楽施設等  
場所 その他場所  
建築部位 階段  
障害程度   
事故にあった方 年齢  
性別 女性 

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
安全配慮義務違反なし
・日本工業規格の照明基準に則った維持照度であったこと
・本件階段の材質や形状について,一般的な階段と異なる特に危険な形状又は材質であるとは認め難いこと

判例の解説

事案の概要
マジックバー(以下「本件店舗」という。)に客として訪れた原告が,店内でのマジックショーに参加しようとしたところ、ステージに上がる階段(以下「本件階段」という。)を踏み外して転倒して(以下「本件事故」という。)負傷したとして、マジックバー店舗経営者に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。
裁判所の判断
1 本件事故は,演者がステージで行うマジックに協力するため,原告である客が,別の客に続いてステージに上がろうとして本件階段に足を掛けようとしたところ,先にステージに上がっていた別の客に手を引っ張られたために足を踏み外し,右下肢に傷害を負ったというものであり,原告が本件階段から足を踏み外したのは,先にステージに上がっていた本件男性客から手を引っ張られて体勢を崩したことが主な原因であったと認められる。

2 本件店舗では、ステージでマジックショーが行われ,演者が客席に降りて協力者を求める場合には,演者と客がすべてステージに上がるまで客席の照明を暗くせず,全員がステージに上がったことを確認してから客席側の照明を暗くする操作をしていることが認められる。また,日本工業規格(JIS)の照明基準では,遊興飲食店の階段における維持照度の推奨値は150ルクス,最小値は40ルクスであるところ,本件階段付近の明るさは,61ルクスから76ルクス程度であることが認められる。これらに照らせば,本件事故の際に,原告の足下が見えず,そのために本件階段から足を踏み外して転倒した旨の原告の供述は採用することができない。

3 本件階段の材質や形状は,一般的な階段と異なる特に危険な形状又は材質であるとは認め難く,客がステージに上がるために本件階段を使用する際に,通常の階段の昇降とは異なる危険性があるとは考え難いことに照らせば,本件店舗で行われるマジックショーの性質上,客がマジックに協力するためにステージに上がることが想定されるとしても,ステージに上がる客が転倒しないように店員が客の脇に立って手を添えて補助したり、万一客が転倒しそうになった場合には客の体を支えられるようにするなどの義務を負っていると解することはできない。
本判決のポイント
事故現場の階段付近の明るさや、階段の材質や形状が一般的な階段と異なるものではなく、具体的な事実関係に基づけば主な事故原因は別にあると認められるとして、店舗経営者には安全配慮義務違反はないとされたことに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 平成27年(ワ)第22830号 
裁判年月日 2017/1/20 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 東京地方裁判所判決 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2094[mid:]