事故事例の詳細
事故概要
賃貸建物の営繕・管理業務に従事していた者が、マンション外壁の計測作業中,当該マンションとその南側に設置されていた被告が管理運営する時間貸駐車場との間に設置された塀(被告が管理)の笠木の最上段に手をかけて歩いた際,塀の最上段部分が落下して右腕に当たり,後方に転倒して,右腕及び腰部に受傷した
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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構造体の強度不足 |
構造体ごと落ちる |
墜落(ベランダや屋上などの高所から落下すること) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
集合住宅の共有部等 |
場所 |
駐車場・車路 |
建築部位 |
柱・壁・間仕切り |
障害程度 |
重度のケガ |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 駐車場管理運営者の不法行為責任・工作物責任否定
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵・過失いずれも無
本件塀及びその周辺の工作物の構造,形状,環境等の諸事情に照らすと,本件塀の笠木を成人男性が不安定な体勢に置いた自己の体を支えるために体重をかけて強く引っ張るというような事態は,本件塀を管理していた被告において通常予測することができたとはいえないから,本件塀の笠木の接着部分がそのような強い負荷にも耐え得るまでの強度を備えていなかったことをもって,本件塀が通常有すべき安全性を欠いていたということはできないし,被告が本件塀の管理者としての安全管理を怠っていたということもできない
判例の解説
- 事案の概要
- 時間貸駐車場に設置された塀の笠木に手をかけたところ,その笠木が落下して負傷した事故につき、工作物責任・安全配慮義務違反による不法行為責任を否定した
- 裁判所の判断
- 裁判所は、概ね以下のように述べて、被害者の請求を棄却した。
1 事故のあった当時、本件塀には,コンクリート板の最上部が笠木に完全に接着されず,その間にわずかな隙間が生じている箇所もあったが,事故当日に本件笠木が落下するまで,本件塀の笠木は全体にずれ,傾き,ゆがみ等はなく一直線に連なった状態で支柱に載っていて特段不安定なところは見受けられず,本件笠木が落下した後も,本件塀のその余の部分の笠木は支柱にモルタルで固定された状態であった。
2 そうすると、本件笠木は,原告が,足元の不安定な状態で反対側に重心を傾けた体を支えるために,これを片手でつかんで体重をかけて手前側に引っ張るという強い負荷を加えたことによって,本件塀の支柱から外れて落下したものであると認められ,事故当時,そのような異常な負荷を加えられることがなくても笠木の崩落が生じ得るまでに,本件塀の支柱と笠木との接着が不良となっていたとは認められない。
3 このような本件塀及びその周辺の工作物の構造,形状,環境等の諸事情に照らすと,本件塀の笠木を成人男性が不安定な体勢に置いた自己の体を支えるために体重をかけて強く引っ張るというような事態は,本件塀を管理していた被告において通常予測することができたとはいえないから,本件塀の笠木の接着部分がそのような強い負荷にも耐え得るまでの強度を備えていなかったことをもって,本件塀が通常有すべき安全性を欠いていたということはできないし,被告が本件塀の管理者としての安全管理を怠っていたということもできない。
4 したがって,本件笠木の落下により原告が負傷したことについて,被告が不法行為責任または工作物責任を負うとは認められない。
- 本判決のポイント
- 設備等が通常の使用に対しては問題が生じるおそれがなく、実際の事故が被害者側の通常の想定を超える行動によって生じたものであるときは、瑕疵や安全配慮義務違反には当たらないとしている点が参考になる。
事件番号・判例時報 |
平成26年(ワ)第33525号 |
裁判年月日 |
平成28年3月22日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
東京地裁 |
判示 |
棄却 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
隣接物件の調査をしていた管理業者社員(47歳男性) |
天候等の状況 |
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ID:1887[mid:]