事故事例の詳細

事故概要

本件は,スーパーマーケットの利用客が,店舗内で買物をした際,同店舗内レジ前通路で転倒して負傷したことから,店舗経営者に対し,安全配慮義務違反の不法行為・債務不履行に基づき、または工作物責任に基づき損害賠償を請求した事案である。 



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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 店舗・娯楽施設等  
場所 その他室内  
建築部位 平坦な床  
障害程度   
事故にあった方 年齢 33歳 
性別 男性 

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
瑕疵・過失(安全配慮義務違反)ともになし
・事故現場の床はレジ台等の死角となるため従業員が視認できない部分があること
・仮に視認可能な範囲に落下物があったとしても,レジ内の従業員がレジ打ちの作業に従事しながら当該落下物を速やかに発見してこれを取り除くことは困難であったこと
・レジ前通路に天ぷらのような商品を他の利用客が落とすことは通常想定し難いこと

判例の解説

事案の概要
スーパーマーケットの利用客でが、午後7時30分ころ、店舗内のレジ前通路を歩行中,床に落ちていたかぼちゃの天ぷら(以下「本件てんぷら」という。)を踏んで転倒し(以下「本件事故」という。),右膝を負傷したことから、店舗経営者に対し,安全配慮義務違反の不法行為・債務不履行または工作物責任に基づき損害賠償を請求した事案である。
原審が利用客の請求の一部を認容したことから、判決を不服として双方が控訴したものである。
裁判では、本件事故当時,レジ前通路にある惣菜売場において,かぼちゃの天ぷらを含む惣菜類を利用客自身が取り惣菜持ち帰り用袋等に詰めてレジまで持参するという方法で販売していたこと、本件店舗では,開店前に店舗内全体の清掃,確認を行っており,営業時間中に定期的な清掃等は行っていなかったが、朝礼や夕礼等の際、店長が従業員に対し,床に汚れや落下物(異物)を見付けた場合には速やかに清掃することを指導していたことが認定されている。
裁判所の判断
1 消費者庁が店舗内の転倒事故に関して発出した文書によると,店舗内の床滑りによる転倒事故は,雨天時や水を使う場所の床濡れによるものが大半を占めており,落下物が原因となる場合も,青果物売場等は想定されているものの,レジ付近の通路は落下物による転倒事故が発生しやすい場所としては挙げられていない。
  また、レジ前通路を通行する利用客からは同通路は見通しがよく,同通路上に商品等の落下物があったとしても目に付きやすく,店舗内が混み合っている時間帯でも利用客が足下の落下物を回避することは特に困難なことではないものと認められる。

2 レジ内の従業員にとって,レジ前通路の床は,レジ台等の死角となるため視認することができない部分があること,仮に視認可能な範囲に落下物があったとしても,レジ内の従業員がレジ打ちの作業に従事しながら当該落下物を速やかに発見してこれを取り除くことは困難であったこと,レジ前通路に本件天ぷらのような商品を利用客が落とすことは通常想定し難いことなどからすれば,店舗経営者には,顧客に対する安全配慮義務として,あらかじめレジ前通路付近において落下物による転倒事故が生じる危険性を想定して,従業員にレジ前通路の状況を目視により確認させたり,従業員を巡回させたりするなどの安全確認のための特段の措置を講じるべき法的義務があったとは認められない。

3 したがって,他の利用客がレジ前通路付近に落とした本件天ぷらを短時間放置させたことにつき,店舗経営者に安全配慮義務違反があったということはできず,不法行為責任や債務不履責任を負うものではないし,本件店舗の設置,管理に瑕疵があることによって本件事故が発生したと認めることはできず,工作物責任を負うものでもないと解するのが相当である。
本判決のポイント
実際に事故が起こった場所や状況等の具体的な事情をもとに瑕疵(通常有すべき安全性の欠如)や安全配慮義務違反の有無が判断されていることに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 令和3年(ネ)第263号 
裁判年月日 2021/8/4 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 東京高等裁判所判決 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2081[mid:]