事故事例の詳細

事故概要

本件は,健康診断のために病院施設を訪れた来院者が、病院施設の床上の水たまりに足を滑らせて転倒し,左上腕部を骨折したとして、病院経営者に対し、工作物責任に基づき損害賠償を請求した事案である。 



この事故の事故パターン

  事故のきっかけ 事故の過程 結果 詳細と留意点
  濡れ  すべる  転倒(床の上で転ぶこと)  事故パターンの詳細と留意点を見る

事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 病院  
場所 その他室内  
建築部位 平坦な床  
障害程度 重度のケガ  
事故にあった方 年齢  
性別 女性 

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
瑕疵あり
・事故現場である通路への立入禁止の表示はされていおらず、健康診断会場へ続く経路を探すために通行することがあり得る通路となっていたこと
・本件通路の床材が光沢を帯び,濡れると滑りやすくなる材質のものであったこと
過失相殺
2割
・本件通路に屋外への開放部分があったこと自体は認識し得たこと
・足元が必ずしも安定しない簡易スリッパを履いていた以上完全な屋内での通行よりも慎重な通行が必要であったこ

判例の解説

事案の概要
健康診断のために病院施設に来院した原告が、病院施設の通路(以下「本件通路」とう。)の床上の水たまりに足を滑らせて転倒する事故(以下「本件事故」という。)により左上腕部を骨折したとして、病院経営者に対し、工作物責任に基づき損害賠償を請求した事案である。
裁判所の判断
1 本件事故発生時,本件事故現場には水たまりが存在し,本件事故は,原告が水たまりに足を滑らせたことによって生じたものであったと認められる。また、本件事故の前夜に合計4.5mmの降雨があり,本件事故現場付近に開放部が存在していたこと,他に水たまりの発生原因となるような事象の存在もうかがわれないことからすれば,本件事故現場の水たまりは,前夜の降雨の影響によって発生したものと推認するのが相当である。


2 本件事故当時,本件通路には立入禁止の表示はなされておらず、健康診断会場へ続く経路を探すために健康診断受診者が通ることがあり得る通路となっていたこと、本件通路の床材は光沢を帯び濡れると滑りやすくなる材質のものであったことなどを踏まえると,降雨の影響によって生じた水たまりの存在した本件通路は,簡易スリッパを履いていることもあり得る健康診断受診者が安全に通行できる性状を欠いた状態にあったと評価するのが相当であり,本件事故は、病院の「保存の瑕疵」によって生じたものということができる。


3 本件通路に屋外への開放部分があったこと自体は原告も認識し得たこと,足元が必ずしも安定しない簡易スリッパを履いていた以上完全な屋内での通行よりも慎重な通行が必要であったこと,ただし本件通路の床材が屋内階段の床と同系色であり原告が屋外であることを意識して慎重に通行しなかったとしてもそのことを過度に重大視することは相当と言い難いことからすれば、本件事故の発生についての原告の過失割合は2割と認めるのが相当である。
本判決のポイント
通路の床上の水たまりによって生じた事故につき、通路の具体的な利用の在り方や通路の床材の材質を踏まえ、事故が生じやすい状況となったときに適切な対応を採らなかったことが保存の瑕疵に当たるとして、工作物責任が認められたことに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 令和2年(ワ)第30327号 
裁判年月日 2022/1/27 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 東京地方裁判所判決 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2078[mid:]