事故事例の詳細

事故概要

本件は、居酒屋の従業員が、居酒屋が入居するビルに設置された、雨に濡れた屋外階段を使用して移動しようとした際、転倒して負傷したことから、居酒屋経営者に対し、屋外階段の床面に滑り止めを施工したり、注意を促す表示をしたり、雨でも滑らない履物を用意したりするなど、屋外階段が雨で濡れた際も、従業員が同階段を安全に使用することができるように配慮すべき義務を怠ったとして、債務不履行に基づき損害賠償を請求した事案である。 



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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 店舗・娯楽施設等  
場所 その他場所  
建築部位 階段  
障害程度   
事故にあった方 年齢  
性別  

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
安全配慮義務違反あり
・雨で濡れた階段をサンダルで降りる場合には滑って転倒しやすいことは容易に認識し得ること
・過去にも同様の転倒事故があったこと
・従業員に対して本件階段の使用について注意を促したり、本件階段に滑り止めの加工をしたりするなどの措置を講じていないこと
過失相殺
4割
本件階段が雨に濡れた状態であることに注意を払わず、漫然と本件階段を降りて本件事故が生じたこと

判例の解説

事案の概要
居酒屋の従業員である控訴人が、勤務する居酒屋(以下「本件店舗」という。)が入居するビル(以下「本件ビル」という。)に設置された、雨に濡れた屋外階段(以下「本件階段」という。)を使用して移動しようとした際、転倒して負傷したことから、居酒屋経営者(被控訴人)に対し、本件階段の床面に滑り止めを施工したり、注意を促す表示をしたり、雨でも滑らない履物を用意したりするなど、屋外階段が雨で濡れた際も、従業員が同階段を安全に使用することができるように配慮すべき義務を怠ったとして、債務不履行に基づき損害賠償を請求した事案である。
 原審は、居酒屋経営者に安全配慮義務違反があったとはいえないとして従業員である原告の請求を棄却したことから、従業員がこの判決を不服として控訴した。
裁判所の判断
1 居酒屋経営者である被控訴人は、本件ビルで本件店舗を経営し、調理担当従業員にて食材の運搬、調理等の業務に従事させており、その業務上の必要から、いわば職場の一部として本件階段を常時使用させるとともに、本件階段ではサンダルを使わせていたものといえる。また、本件階段は、本件ビルの屋外に設置された外階段であって、雨よけ等の屋根がなく雨に濡れる場所にあったところ、控訴人の前任者が雨で濡れた本件階段で足を滑らせて転倒し、本件事故の直前にも別の従業員2名が足を滑らせて転倒していたことが認められる。このような事情の下では、本件事故時において、従業員が降雨の影響によって滑りやすくなった本件階段を裏面が摩耗したサンダルを履いて降りる場合には、本件階段は従業員が安全に使用できる性状を客観的に欠いた状態にあったものというべきである。

2 居酒屋経営者である被控訴人は、雨で濡れた階段をサンダルで降りる場合には滑って転倒しやすいことを容易に認識し得るし、過去の転倒事故を踏まえれば本件階段で足を滑らせて転倒するなどの危険が生ずる可能性があることを客観的に予見し得たのであるから、本件事故時には、そのような危険が現実化することを回避すべく、控訴人である従業員に対し本件階段の使用について注意を促したり、本件階段に滑り止めの加工をしたりするなどの措置を講じ、控訴人を含む従業員が本件階段を安全に使用することができるよう配慮すべき義務を負っている。しかしながら被控訴人は、何らかの安全対策を採っていたとは認められないから、控訴人に対する安全配慮義務に違反したものといわざるを得ない。

3 ただし控訴人は、本件階段が雨に濡れた状態であることに注意を払わず、漫然と本件階段を降りて本件事故が生じたものであることから、控訴人の過失割合は4割と認めるのが相当である。
本判決のポイント
客観的な設備の設置状況や具体的な利用状況に加え、過去に同種の事故が発生していたことから危険を具体的に予見できたにもかかわらず、適切な結果回避措置をとっていなかったことをもって安全配慮義務違反が認められていることに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 令和3年(ネ)第5712号 
裁判年月日 2022/6/29 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 東京高等裁判所判決 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2075[mid:]