事故事例の詳細

事故概要

本件は,スーパーマーケットに買物に訪れた来店者が、生鮮野菜売場の床が水浸しのまま放置されていたため足を滑らせて転倒し,左肘を骨折したとして,店舗経営者に対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。 



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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 店舗・娯楽施設等  
場所 その他室内  
建築部位 平坦な床  
障害程度 重度のケガ  
事故にあった方 年齢 58歳 
性別 男性 

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
信義則上の安全配慮義務違反あり
・店舗経営者は、事故があった陳列場所周辺の床が,サニーレタスに付いた水が垂れることによって一定の範囲で濡れることとなる可能性を認識していたと認められること
・店舗経営者は、その危険性を考慮して一定時間の間隔で清掃をする等の転倒防止のための対応を採ってなかったこと
過失相殺
8割 
・店舗の利用客である原告にも歩行中に自らの足元の状況に注意を払うべき義務があること
・本件水濡れ範囲が比較的限られた部分にとどまる状況であったこと
・開店から数時間が経過する中でも原告以外に本件事故現場で転倒した者がいなかったこと

判例の解説

事案の概要
スーパーマーケットに買物に訪れた来店者が,生鮮野菜売場の床が水浸しのまま放置されていたため足を滑らせて転倒し(以下「本件事故」という。),左肘を骨折して併合6級相当の後遺障害が残存したとして,店舗経営者に対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。
裁判では、本件店舗では,普段,買物客が来店直後に目にしやすいように,フロアの出入口に当たる階段付近に特売品を陳列した特設平台を設置しており、本件事故当時そこには水気を含んだサニーレタスが陳列されていたこと,特設平台と平台との間の床には買物客が特設平台からサニーレタスを取り上げた際にサニーレタスから垂れた水が滞留していた範囲(以下「本件水濡れ範囲」という。)があったこと、原告は,特設平台の付近を歩行した際に本件水濡れ範囲に進入し,足を滑らせて転倒したことが認定されている
裁判所の判断
1 本件事故は,原告が通常の買物客と同様の態様で買物をしていたにもかかわらず,買物客が特設平台に置かれたサニーレタスを取り出す際に水が垂れるという状況が繰り返されることにより本件水濡れ範囲が生じたことが原因となって発生したものであって、原告が極端に特設平台に接近して歩行していたような状況はうかがわれない。また,店舗側が開店から本件事故が発生するまでの間にサニーレタスから垂れる水について清掃等の対応を採っていた形跡がうかがわれないことからすると,本件水漏れ範囲は通常の歩行であっても転倒の危険が生じ得る広さに及んでいたと認めるのが相当である。

2 店舗経営者は,本件事故の現場が一定の範囲で濡れることとなる可能性を認識していたと認められる一方で,その危険性を考慮して一定時間の間隔で清掃等の転倒防止のための対応を採っていた形跡がうかがわれないから,本件事故について,信義則上の安全管理義務違反があったというべきである。

3 ただし、本件店舗の利用客である原告にも,歩行中に自らの足元の状況に注意を払うべき義務があること,本件水濡れ範囲が比較的限られた部分にとどまる状況であったこと、開店から数時間が経過する中でも原告以外に本件事故現場で転倒した者がいなかったことからすると,原告の過失割合は2割と認めるのが相当である。
本判決のポイント
事故の原因となった状況が店舗経営者として十分に予見可能であったにもかかわらず適切な対応をとっていない場合には、顧客に対する信義則上の安全配慮義務違反が認められることに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 平成30年(ワ)第18892号 
裁判年月日 2021/7/28 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 東京地方裁判所判決 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2082[mid:]