事故事例の詳細
事故概要
本件は、店舗内でコンビニエンスストアを経営している者が、店舗入口のスロープ(スロープとその周辺は、店舗出入口(風除室出入口)と公道との間の犬走となっており、同じタイルが敷かれていた)で転倒して負傷したことから、スロープの勾配が条例で定められた制限を超えており、同スロープに使用されているタイルはメーカーが勾配部分での使用を推奨いないものであることなどとして、当該スロープを設置し占有していた店舗管理者に対し、工作物責任に基づき損害賠償を請求した事案である。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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その他・詳細不明 |
その他・詳細不明 |
転倒(床の上で転ぶこと) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
店舗・娯楽施設等 |
場所 |
外構・アプローチ |
建築部位 |
スロープ |
障害程度 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
・スロープの勾配が建築基準法施行令に定める基準に違反している可能性を完全には否定できないこと
・スロープの勾配が条例等に定める基準に違反していること
・スロープに設置したタイルは、使用設置された勾配部の位置、形状等によっては、メーカー仕様に違反する施工方法であるとされる余地が残ること
- 過失相殺
- 75%
・被害者も本件店舗内に出店している店の管理者であること(顧客に対し安全配慮義務を負い、スロープの設置管理に責任を負う立場にあること)
・事故同時スロープが滑りやすくなっていたことを了知可能であったこと
・小走りまたは急ぎ足で歩行していたと推認されるこ
判例の解説
- 事案の概要
- 店舗内でコンビニエンスストアを経営している者が、店舗入口のスロープ(スロープとその周辺は、店舗出入口(風除室出入口)と公道との間の犬走となっており、同じタイルが敷かれていた。以下「本件スロープ」という。)で転倒して負傷したことから、本件スロープの勾配が条例で定められた制限を超えている、本件スロープに使用されているタイルはメーカーが勾配部分での使用を推奨していないものであるなどとして、本件スロープを設置し占有していた店舗管理者に対し、工作物責任に基づき損害賠償を請求した事案である。
原審が被害者の請求を棄却したため、被害者がこれを不服として控訴した。
- 裁判所の判断
- 1 本件スロープは事故後に改修されており、改修後の現状の勾配の平均値は約12%であり、本件スロープ公道側部分の一部に着目すると勾配は12.3%を超える部分が存在していることが認められる。本件スロープの勾配は、建築基準法施行令に定める12.5%を超える勾配があるとまでは認められないものの、改修後に勾配が変化した可能性は否定できないこと、少なくとも12.3%を超える部分が存在すること、スロープが短いためにわずかな高低差の変化によって勾配が変動することなどを総合考慮すれば、本件スロープの公道側の一部に約12.5%程度の勾配があった可能性を完全に否定することはできない。
2 本件スロープは、条例によれば一般都市施設の屋外の傾斜路に該当するところ、その勾配は条例及び条例に基づく規則で8.3%以下であることが必要されるが、本件スロープの平均が約12%であることから、本件スロープの勾配は、条例及び条例に基づく規則に違反するものと認められる。
3 本件タイルのメーカーが作成した仕様についての指標値では、すべり抵抗値(BPN)25~39は「平坦な場所で普通の歩行であれば安全」とされ、BPN40~46が「勾配部でも普通の歩行であれば安全、低速であれば車の乗り入れが可能」とされてている。本件タイルのBPNは35.8~38.4であり、上記指標値によれば、勾配部の使用には必ずしも適していないことになる。ただしカタログには、スロープ部分への使用を推奨しない旨の記載はないことから、本件タイルを勾配部に使用することは、メーカーが明示的に禁止する使用方法とまでは言えないものの、本件タイルが使用設置された勾配部の位置、形状等によっては、推奨する施工方法を採用しなかったことがメーカー仕様に違反するとされる余地が残り、請負契約上の施工瑕疵と評価されることもあり得る。
4 以上から、本件スロープには、建物出入口に設置されたスロープとして通常有すべき安全性を欠いているものと認められ、当該スロープを設置し占有していた店舗経営者は工作物責任を負う。
5 しかし、被害者は本件店舗でコンビニエンスストアを経営する管理者であり、顧客との関係では安全配慮義務を負う立場(本件スロープの設置瑕疵に責任を負う立場)にあったこと、事故当時の本件スロープが降雨によって滑りやすくなっていたことは被害者も十分了解可能であったこと、被害者は小走りまたは急ぎ足で歩行していたと推認されることなどから、被害者の過失割合は75%と認めるのが相当である。
- 本判決のポイント
- 瑕疵の有無の判断に当たって、事故当時は法令に違反していた可能性が否定できないこと、条例等に定めている基準には違反していること、個別具体の状況によってはメーカーの推奨しない方法によりタイルが設置されていると評価されることなどを総合的に考慮して瑕疵が認められた点に留意する必要がある。また、本件では、被害者が一般の顧客ではなく、店舗内に出店し、事故があった設備の設置に責任を有する立場にあったことから、被害者側の過失割合が高めに認定されていることにも留意する必要がある。
事件番号・判例時報 |
平成23年(ネ)第3490号 |
裁判年月日 |
2012/6/12 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
東京高等裁判所判決 |
判示 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
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天候等の状況 |
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ID:2098[mid:]