事故事例の詳細

事故概要

本件は,飲食店において飲食した客が,飲食を終えて同店舗の出口に向かっていたところ,同店舗の従業員が床掃除のために床に水を撒いていたため,水で滑りやすくなっていた床に滑り転倒し,床に左膝を打ちつけて左膝蓋骨骨折の傷害を負ったとして、店舗経営者に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。 



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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 店舗・娯楽施設等  
場所 その他場所  
建築部位 平坦な床  
障害程度 重度のケガ  
事故にあった方 年齢 30歳 
性別 女性 

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
安全配慮義務違反あり
・店舗の従業員が、靴底が水で濡れた状態で本件事故現場付近を漫然と歩行したために,事故現場付近について水濡れにより滑りやすい状況を作出したこと
・水濡れを発見した店長も,事故現場付近の水濡れを完全に除去できていなかったこと
・帰ろうとする顧客に対する店長の「足元お気をつけてお帰りください。」との声かけは,現実に水濡れにより滑りやすくなっている場合における注意喚起としては不十分であること
過失相殺
なし

判例の解説

事案の概要
飲食店(以下「本件店舗」という。)において飲食した客が,飲食を終えて本件店舗の出口に向かっていたところ,本件店舗の従業員が床掃除のために床に水を撒いていたため,水で滑りやすくなっていた床に滑り転倒し(以下「本件事故」という。),床に左膝を打ちつけて左膝蓋骨骨折の傷害を負ったとして、本件店舗経営者に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である
裁判所の判断
1 本件店舗は,不特定多数の顧客に対して,店舗内で酒類を含む飲食物を提供しているのであるから,本件店舗の経営者である被告には,顧客が本件店舗内において飲食等をするに当たって,営業中,その安全を図る信義則上の義務があり,その一内容として,顧客が歩行する場所の床の水濡れが放置されることのないよう配慮し,また,水濡れが発見された場合には,これを水分が残らないように拭き取ったり,顧客に対して適切な注意喚起を行うべき義務があったというべきである。

2 本件店舗の従業員は,靴底が水で濡れた状態で本件事故現場付近を漫然と歩行したために,同付近について水濡れにより滑りやすい状況を作出したこと、水濡れを発見した本件店舗の店長も,同付近の水濡れを完全に除去できていなかったことが認められる。また、店長は,本件事故の現場付近を歩行する顧客に対して「足元お気をつけてお帰りください。」との声かけを行っていたものの,このような内容の声かけは,一般的に,飲食店の従業員が顧客を見送るときにしばしばされるものであるから,顧客がこのような声かけを聞いたとしても,これにより直ちに本件事故の現場付近が水濡れにより滑りやすくなっているとの趣旨を理解するのは困難であり,顧客に対する注意喚起として不十分である。したがって、被告は,信義則に基づく安全管理上の義務に違反したというべきであるから,本件事故の発生につき,原告に対し不法行為責任を負う。

3 上記のとおり、店長の声かけでは原告が本件事故現場付近が水濡れにより滑りやすくなっているとの趣旨を理解することは困難であったのであるから,原告が,本件事故現場付近が水濡れにより滑りやすくなっていることを認識し,または容易に認識し得たにもかかわらず,漫然と歩行したものとは認められない。よって、本件について原告に過失相殺されるべき過失は認められない。
本判決のポイント
飲食店における顧客に対する安全配慮義務(安全管理義務)として、顧客が歩行する場所の床に水濡れが放置されることのないよう配慮するとともに,水濡れが発見された場合には顧客に対して適切な注意喚起を行うべき義務があること、一般的に顧客が退店する際に発せられる「足元お気をつけてお帰りください。」との声かけでは注意喚起として不十分と判断されたことに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 平成27年(ワ)第15830号 
裁判年月日 2016/9/21 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 東京地方裁判所判決 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2095[mid:]