事故事例の詳細
事故概要
保育園の屋上に設置された駐車場から乗用車が転落し、園庭にいた園児に直撃し死亡した。
本件駐車場は,本件保育園の職員や保護者の運転する自動車の駐車や方向転換の目的で設置されたものであるところ,本件駐車場柵の南側は,約95センチメートル突き出た本件南側園舎の庇があるのみで,庇の上端から垂直に2.95メートル(本件駐車場柵の基礎上端からは約3.6メートル)本件園庭に落ち込んでいる。また、過去にも同様の落下事故が生じていた(負傷者なし)が、その後、特段の措置は講じられていなかった。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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(自動車の)操作ミス |
自動車が落ちる |
落下物にあたる |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
学校 |
場所 |
駐車場・車路 その他場所 |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
死亡 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 建物所有者・占有者(保育園経営者)
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
本件駐車場の構造等につき、
ア 本件駐車場柵の強度が7.6トンの衝撃力に耐え得なかったこと,
イ 昭和61年9月1日住指発第185号通達「立体駐車場における自動車転落事故防止対策について」によれば,本件事故当時,国土交通省は,立体駐車場における自動車の転落防止対策の設計指針の基準として,床面からの高さ60センチメートルの位置で,幅160センチメートルにわたり,25トンの衝撃力が加わっても自動車の転落を有効に防止できるような装置等を設置することを定めていること
から、本件事故当時,本件駐車場柵の強度は,駐車ないし方向転換自動車の衝突による転落を防止するには不十分であったと認め、工作物の設置保存に瑕疵がある。
判例の解説
- 事案の概要
- 保育園の屋上に設置された駐車場から乗用車が転落し、園庭にいた園児に直撃し死亡した事故が発生した。被害者遺族が、保育園経営者らに対し工作物責任に基づき、代表理事及び園長に対し、安全配慮義務違反による一般不法行為責任に基づき、損害賠償を請求した事案である。
なお、本件駐車場は,本件保育園の職員や保護者の運転する自動車の駐車や方向転換の目的で設置されたものであるところ,本件駐車場柵の南側は,約95センチメートル突き出た本件南側園舎の庇があるのみで,庇の上端から垂直に2.95メートル(本件駐車場柵の基礎上端からは約3.6メートル)本件園庭に落ち込んでいる。また、過去にも同様の落下事故が生じてた(負傷者なし)が、その後特段の措置は講じられていなかった。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 園庭には多数の本件保育園園児,保護者及び職員が存在していることが予定されているから,本件駐車場から駐車ないし方向転換の自動車が逸脱して園庭に落下することは絶対に防止しなければならないとし、本件駐車場柵は,多数の園児の命を守る生命線というべきものであり,その強度やこれと一体となった本件駐車場の構造については,高度の安全性が要求されるものと解すのが相当であるとしたうえで、
② 本件駐車場の構造等につき、
ア 本件駐車場柵の強度が7.6トンの衝撃力に耐え得なかったこと,
イ 昭和61年9月1日住指発第185号通達「立体駐車場における自動車転落事故防止対策について」によれば,本件事故当時,国土交通省は,立体駐車場における自動車の転落防止対策の設計指針の基準として,床面からの高さ60センチメートルの位置で,幅160センチメートルにわたり,25トンの衝撃力が加わっても自動車の転落を有効に防止できるような装置等を設置することを定めていること
から、本件事故当時,本件駐車場柵の強度は,駐車ないし方向転換自動車の衝突による転落を防止するには不十分であったと認め、工作物の設置保存に瑕疵があるとして、建物所有者である保育園経営者に対し損害賠償責任を認めた。
③ ただし、代表理事及び園長の安全配慮義務違反は認めなかった。
事件番号・判例時報 |
平成15年(ワ)611
1898号87頁 |
裁判年月日 |
平成17年3月29日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
名古屋地裁 |
判示 |
一部認容
一部棄却 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
園児 |
天候等の状況 |
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ID:314[mid:88]