事故事例の詳細

事故概要

ホテルの室内で宿泊客の子供(2歳)が、遊んでいるうちに誤って窓から約三・五メートル下の一階渡り廊下の屋根の上に転落し、このため左頭頂部陥凹骨折の傷害を負った。

 事故があった部屋は、窓は一か所にのみ存したこと、窓がまちの巾は三八センチメートルあって、その内側から一七センチメートルのところに八センチメートル巾でアルミサッシの戸が取り付けられていたこと、窓の外側には木製の網戸がはめこまれていたが、この網戸は虫よけのための設備であって容易に取りはずしができ、人の転落を防止する機能を有するものではなかったこと、ほかに手摺その他の人の転落を防止するための設備は何も施されていなかったこと、部屋の窓際にはテーブル一つと椅子二つが置かれていたことが認められている。 



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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 ホテル・旅館  
場所 その他室内  
建築部位 窓  
障害程度 重度のケガ  
事故にあった方 年齢  
性別  

判例の詳細

責任の所在
建物所有者・占有者(ホテル経営者)
瑕疵・過失の有無
瑕疵あり

本件は、

ア 窓がまちは床面から五〇センチメートルの位置にあって手摺等の転落を防止するための設備は何も施されていなかったこと

イ この状態では、窓がまちの巾が三八センチメートルあったことを考慮しても、成人の客が過って転落し、または幼児が椅子やテーブルから窓がまちにのり移って転落するおそれが多分にあったといわざるを得ないこと、

から、本件建物が建築関係法規に適合した建物であり、かつ五〇センチメートルの高さで窓を設置した例が他にあったとしても、室の窓の設備には瑕疵があり、ひいては工作物である本件建物の設置につき瑕疵がある。
過失相殺
被害者両親には監護義務者としての過失があるとして、過失相殺(3割)したところである。

判例の解説

事案の概要
ホテルの室内で宿泊客の子供(2歳)が、遊んでいるうちに誤って窓から約三・五メートル下の一階渡り廊下の屋根の上に転落し、このため左頭頂部陥凹骨折の傷害を負ったことなどから、被害者が、ホテル建物所有者に対し、工作物責任に基づく損害賠償を請求した事案である。

事故があった部屋は、窓は一か所にのみ存したこと、窓がまちの巾は三八センチメートルあって、その内側から一七センチメートルのところに八センチメートル巾でアルミサッシの戸が取り付けられていたこと、窓の外側には木製の網戸がはめこまれていたが、この網戸は虫よけのための設備であって容易に取りはずしができ、人の転落を防止する機能を有するものではなかったこと、ほかに手摺その他の人の転落を防止するための設備は何も施されていなかったこと、部屋の窓際にはテーブル一つと椅子二つが置かれていたことが認められている。

裁判所の判断
裁判所は、

① 旅館の建物は、不特定の顧客が常時利用する施設であるから、その占有者は、建物の構造および機能につき、顧客の生命、身体、財産を害する危険のないように十分な配慮をしなければならず、客室の窓の設備は顧客の些細な不注意によってたやすく転落を証ずるような設備であってはならず、容易に転落を生ずるおそれのない位置(床面からの高さを十分にとった位置)に窓を設けるか、または低い位置に設ける場合には手摺その他の転落を防止するための設備を設けることを要するとした。

② その上で、本件は、

 ア 窓がまちは床面から五〇センチメートルの位置にあって手摺等の転落を防止するた

めの設備は何も施されていなかったこと

 イ この状態では、窓がまちの巾が三八センチメートルあったことを考慮しても、成人の客が過って転落し、または幼児が椅子やテーブルから窓がまちにのり移って転落するおそれが多分にあったといわざるを得ないこと、

から、本件建物が建築関係法規に適合した建物であり、かつ五〇センチメートルの高さ

で窓を設置した例が他にあったとしても、室の窓の設備には瑕疵があり、ひいては工作物である本件建物の設置につき瑕疵があったというべきであるとした。

③ よって、本件建物には工作物の設置に関する瑕疵があり、原告るみは右瑕疵により前記傷害を負ったのであるから、被告はその占有者として、被害者に対し損害を賠償する義務があるとしたところである。

④ ただし、被害者両親には監護義務者としての過失があるとして、過失相殺(3割)したところである。
事件番号・判例時報 昭和46年(ワ)1258

704号70頁 
裁判年月日 昭和47年7月28日 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 札幌地裁 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者 利用客 
天候等の状況  
ID:175[mid:18]