事故事例の詳細
事故概要
本件は,スーパーマーケットの来店者が、店舗出入口前に敷かれてあったエントランスマットと地面の間につま先を入れてしまい転倒して後遺障害を負ったとして,店舗経営者に対し,不法行為または工作物責任に基づく損害賠償を請求した事案である。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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ケーブル類 |
ひっかかる |
転倒(床の上で転ぶこと) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
店舗・娯楽施設等 |
場所 |
出入り口 |
建築部位 |
平坦な床 |
障害程度 |
重度のケガ |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵・過失ともになし
判例の解説
- 事案の概要
- 本件は,スーパーマーケット店舗出入口前に敷かれてあったエントランスマット(以下「本件マット」という。)につま先を入れてしまい転倒して(以下「本件事故」という。)後遺障害を負ったとして,来店者である原告(88歳女性)が,店舗経営者に対し,不法行為または工作物責任に基づき損害賠償を請求した事案である。
- 裁判所の判断
- 1 本件マットは,軟質のニトリロラバーバッキングからできていて床面への密着性が高く,重量が5800gであったことから,本件マット自体のずれ,めくれ等が少なく床接触面との対滑性が高いとされている。ただし本件マットは,自重によりフラットな状態に戻る性質を有しおり,通常はフラットな状態であるが,たわんで隙間ができたりめくれたりする可能性は否定できず,過去にめくれた事例も皆無ではなかったことからすると、本件事故は、本件マットがめくれることによって床との間に隙間が生じていたことが原因であると認められる。
2 一般的にマットの固定義務は認められていないことに加え,本件マットに隙間が生じる可能性は低いことから,通常固定されない状態で使用されていたことからすれば,店舗経営者には、本件事故当時本件マットを地面に固定すべき義務があったとは認められない。また、店舗経営者には,本件マットがずれないように床面を清掃したり,滑りにくくコーティングしたりする義務に違反したことをうかがわせる証拠はなく,仮に義務違反があったとしても,本件事故の原因と関係があるとは認められない。したがって、店舗経営者には、本件マットと地面との間に隙間を設けないようにする義務及び本件マットを固定するよう配慮すべき義務はなく、よって不法行為責任は生じない。
3 本件マットは軟質のラバー製であって,店舗の床に置かれているに過ぎず,店舗の床に物理的に結合されるべきものではないため,本件マットは工作物には該当せず、よって店舗経営者には工作物責任も生じない。
- 本判決のポイント
- エントランスマットは工作物責任が生じる「土地上の工作物」には該当しないとしたこと、事故の原因が当該マットの設置状況にあったとしても、マットは通常は床等に固定して使用されるものではないことから、店舗経営者にはマットの固定義務はないとして、過失を否定していることに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 |
平成29年(ワ)第987号 |
裁判年月日 |
2019/3/14 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
広島地方裁判所判決 |
判示 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
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天候等の状況 |
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ID:2087[mid:]