事故事例の詳細
事故概要
本件は、銀行の来店者が、店内のATMの利用後に、退店しようと店舗出入口に向かい、そこに敷設されていた足ふきマットに足を乗せたところ、マットが被害者の足を乗せたまま横にずれたため、被害者が転倒し負傷したとして、店舗管理者に対し、安全確保義務違反の不法行為に基づき損害賠償を請求した事案である。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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すべる床材 |
すべる |
転倒(床の上で転ぶこと) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
店舗・娯楽施設等 |
場所 |
出入り口 |
建築部位 |
平坦な床 |
障害程度 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 瑕疵・過失の有無
- 過失あり
・本件店舗は繁華街にあり、老若男女を問わず、様々な顧客が多数本件マットの上を歩行していたことから、これらの顧客が転倒等することがないようにマットを整備しておくべき注意義務に違反したこと
- 過失相殺
- 40%
・本件マットは本件事故の6日前からほぼ同様の状態で敷設されており、本件事故発生までに多数の来店者がその上を歩行していたにもかかわらず、何らかの危険を店舗側に通報した者はいないこと
・本件事故当時被害者は多数の荷物を抱え、運動の自由を制約された不安定な状態で歩行していたこと
- 損害賠償の範囲
- ・治療に要する期間を3か月とし、その間に相当する休業損害・慰謝料についてのみ肯定
判例の解説
- 事案の概要
- 銀行の来店者(57歳・女性)が、店内のATMを利用後に、退店しようと店舗出入口に向かい、そこに敷設されていた足ふきマット(以下「本件マット」という。)に足を乗せたところ、本件マットが被害者の足を乗せたまま横にずれたため、被害者が転倒し(以下「本件事故」という。)負傷したとして、店舗管理者に対し、安全確保義務違反の不法行為に基づき損害賠償を請求した事案である。
原審は、被害者の請求を棄却したため、これを不服として被害者が控訴した
- 裁判所の判断
- 1 本件マットは、合成ゴム製で相当な重量があるが、本件事故直後に被害者が撮影した本件マットの裏面の写真には、マット裏面の一部が水分または油分によってやや湿潤の状態であり、マット全体が不均等に波打っている様子が記録されている。
一方本件床は、事故当時の状況を再現した場合の床面の滑り抵抗係数の平均値は0.38にとどまり、東京都福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルの定める基準(CSRが0.4以上であること。以下「本件安全基準」という。)を下回っていたことが認められる。
2 以上によれば、本件事故当時、本件マット裏面全体と本件床面との間には部分的に滑り抵抗係数の低い部分が存在し、マットはその表面に斜め上部方向から力が加わることにより本件床面上を滑りやすい状態にあり、本件事故は、被害者が右足を本件マット表面に乗せたことによってその一部が本件床面との摩擦抵抗を失って横に移動し、身体のバランスを崩して転倒したものと認めることができる。
3 本件店舗は繁華街にあり、店舗内にATMコーナーが設置されていたのであるから、これを利用するために、老若男女を問わず、様々な顧客が多数往来しており、その都度本件店舗出入口に敷設されていた本件マットの上を歩行していたことが認められる。そして、人の歩行に対する安全確保のためには着地面の滑り防止が必要とされることからすれば、本件マットについても、顧客がその上を通常の態様で歩行するに当たって加えられる力により本件床面上をすべることがないように整備しておくことが求められる。しかし本件マットの敷設状況は上記のとおりであり、店舗管理者には、店舗出入口の安全確保に関し、本件マットが本件床面上を滑りやすい状態で敷設されていた点で注意義務違反がある。また、店舗管理者が、本件マットを定期的に交換し、本件床面等が委託先の業者により適切に清掃されていたとしても、足ふきマットや店舗の床面の管理を業者に任せきりにし、本件マット等が上記状態にあることを見過ごしていた点において、注意義務違反は否定しがたい。
4 ただし、上記注意義務違反と相当因果関係を有する損害は、被害者が治療に要したと主張する期間すべてではなく、本件事故発生後3か月分に相当する期間の休業損害・慰謝料に限られる。
また、本件マットは本件事故の6日前からほぼ同様の状態で敷設されており、本件事故発生までに多数の来店者がその上を歩行していたにもかかわらず、何らかの危険を店舗側に通報した者はいないこと、本件事故当時被害者は多数の荷物を抱え、運動の自由を制約された不安定な状態で歩行していたことなどから、被害者の過失割合は4割と認めるのが相当である。
- 本判決のポイント
- 事故現場のマットと床との間の滑り係数が条例で定められた基準を満たしていないことから事故の状況や要因が認定されていること、事故が生じた店舗が繁華街にあり老若男女様々な利用者がいることを前提に、確保されるべき安全の程度を評価し、店舗管理者の安全配慮義務違反が認められたことに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 |
平成25年(ネ)第6174号 |
裁判年月日 |
2014/3/13 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
東京高等裁判所判決 |
判示 |
来店者が店舗出入口に敷設された足ふきマットに足を乗せた途端にこれがまくれ上がって転倒し負傷した事故につき、本件出入口のマットが床面上の滑りやすい状態で敷設されていた点で安全確保義務に違反しているとして、店舗管理者の不法行為責任が認められた事例 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
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天候等の状況 |
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ID:2096[mid:]