事故事例の詳細
事故概要
訪問先のアパートの二階便所の非常口から外部に転落し負傷した。
本件アパートは、もともと本造平家建建物であったものを二階を増築してアパートに改築したのであるが、その際、大工の助言によって二階便所の奥にそこから非常事態発生の際には外部に脱出できる非常口を設けた。非常口の戸には普段差し込みの錠が付けられているが、その錠は留め金式であるため手で操作しないかぎり容易にはずれるようなことはなく、また、便所には夜間でも使用しやすいように六〇ワツトの電球が一個付けられていた。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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(人の立ち入りが想定されない高所) |
手すりなどがなく落ちる |
墜落(ベランダや屋上などの高所から落下すること) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
集合住宅の共有部等 |
場所 |
出入り口 水回り(キッチン・トイレ・風呂) |
建築部位 |
ドア・シャッター |
障害程度 |
重度のケガ |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 建物所有者
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵、過失無し
非常口の設置はアパートの改築を請負った大工の助言によるものであり、しかも日常はその非常口に施錠し容易に外部に開かないようにしていたものである。
被害者としては、「訪問先のアパートの便所を使用するに際しては、出入口を確認することはいうに及ばず不要意に壁などに手をかけることのないよう僅かな注意を払えば不測の事故を未然に防止し得た」として、このような「容易に遵守すべき注意義務をつくさなかつたことによるものであるといわざるを得ないから、その結果についてはいわゆる自損行為として自らその責を負い、これを便所の管理の瑕疵あるいは他人の不法行為によるものとして損害賠償の請求をすることはできない」
判例の解説
- 事案の概要
- 訪問先のアパートの二階便所の非常口から外部に転落し負傷した被害者が、アパート所有者に対し工作物責任に基づく損害賠償を請求した事案である。
本件アパートは、もともと本造平家建建物であったものを二階を増築してアパートに改築したのであるが、その際、大工の助言によつて二階便所の奥にそこから非常事態発生の際には外部に脱出できる非常口を設けた。非常口の戸には普段差し込みの錠が付けられているが、その錠は留め金式であるため手で操作しないかぎり容易にはずれるようなことはなく、また、便所には夜間でも使用しやすいように六〇ワツトの電球が一個付けられていた。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 非常口の設置はアパートの改築を請負つた大工の助言によるものであり、しかも日常はその非常口に施錠し容易に外部に開かないようにしていたものであるから、建築に特別の知識を持ち合わせておらず、しかも便所の清掃をも二階の居住者にまかせていた被告にその設置・管理の不適切の責任を負わせることはでき難いとし、
② 被害者は、「友人の居住するアパートを訪ねて雑談に時を費していたのであるから、訪問先のアパートの状況および日常の生活様式を自ら容認してアパートに立入つたものというべく、アパートの経営者としても、訪問者の存在によつて特にアパートの居住者に対する以上に高度の注意義務を負い、すべての訪問者に対し便所内の非常口の存在等を周知徹底するような方法を講ずることを要求されるものとは考えられない」とした上で、
③ 被害者としては、「訪問先のアパートの便所を使用するに際しては、出入口を確認することはいうに及ばず不要意に壁などに手をかけることのないよう僅かな注意を払えば不測の事故を未然に防止し得た」として、このような「容易に遵守すべき注意義務をつくさなかつたことによるものであるといわざるを得ないから、その結果についてはいわゆる自損行為として自らその責を負い、これを便所の管理の瑕疵あるいは他人の不法行為によるものとして損害賠償の請求をすることはできない」と判断した。
事件番号・判例時報 |
昭和49年(ワ)5497
334号264頁 |
裁判年月日 |
昭和50年11月25日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
東京地裁 |
判示 |
棄却 未確定 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
訪問者 |
天候等の状況 |
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ID:178[mid:23]