事故事例の詳細
事故概要
居酒屋で仲間と飲食をしていた大学生(当時3年生)が、仲間と写真撮影の後、テーブルの方に向き直らずに後ろ向きのまま左足でテーブルを跨いで自分の席に帰ろうとしたが、跨いだ瞬間体のバランスを失ってよろめき、約四〇センチメートルの広さに開いていた本件窓から道路に転落し死亡した。
本件店舗はビルの三階にあり、太郎が転落した窓(以下本件窓という。)は、道路に面していて、床から約四〇センチメートルしかない腰壁に設置され、手すり等の防護設備は何らなされていなかつたこと、本件窓は自由に開閉できる状態にあり、常にカーテンがしてあった。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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窓枠が低い |
窓から落ちる |
墜落(ベランダや屋上などの高所から落下すること) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
店舗・娯楽施設等 |
場所 |
その他室内 |
建築部位 |
窓 |
障害程度 |
死亡 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 建物占有者(居酒屋経営者)
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり。
本件窓は、座敷の上約四〇センチメートル(大人の膝の高さ)の位置に開口していて
注意力や反射速度、運動能力などが低下した酔客が何らかのはずみで転落する危険を有するものであり、手すり等の転落防止措置が執られていない以上、本件窓を含む本件店舗にはその設置・保存に瑕疵がある。
- 過失相殺
- 被害者にも、酒の影響による注意力、判断力、運動能力の低下が認められ、かつ、実際の行動も酔客の一般的傾向から大きく外れるものであったとして、過失相殺(5割)している。
判例の解説
- 事案の概要
- 居酒屋で仲間と飲食をしていた大学生(当時3年生)が、仲間と写真撮影の後、テーブルの方に向き直らずに後ろ向きのまま左足でテーブルを跨いで自分の席に帰ろうとしたが、跨いだ瞬間体のバランスを失つてよろめき、約四〇センチメートルの広さに開いていた本件窓から道路に転落し死亡した。被害者遺族が居酒屋経営者(建物占有者)に対し、工作物責任に基づく損害賠償を求めた事案である。
なお、本件店舗はビルの三階にあり、太郎が転落した窓(以下本件窓という。)は、道路に面していて、床から約四〇センチメートルしかない腰壁に設置され、手すり等の防護設備は何らなされていなかつたこと、本件窓は自由に開閉できる状態にあり、常にカーテンがしてあった。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 本件店舗は、
ア その営業時間からしても、太郎達のように、二次会、あるいは三次会の場所として利用する客も多く、場合によれば酩酊した客もいるであろうことは当然に予想されたこと
イ 本件窓のほかには調理場の換気扇と入口のドアーしか換気口がなかつたのであるから、本件窓を換気のために開ける酔客もありうることも予想できたこと
を前提とし、
② 本件窓は、座敷の上約四〇センチメートル(大人の膝の高さ)の位置に開口していて
注意力や反射速度、運動能力などが低下した酔客が何らかのはずみで転落する危険を有するものであり、手すり等の転落防止措置が執られていない以上、本件窓を含む本件店舗にはその設置・保存に瑕疵があるとして、損害賠償責任を認めた。
③ ただし、被害者にも、酒の影響による注意力、判断力、運動能力の低下が認められ、かつ、実際の行動も酔客の一般的傾向から大きく外れるものであったとして、過失相殺(5割)している。
事件番号・判例時報 |
昭和60年(ワ)3396
1256-51
652-182 |
裁判年月日 |
昭和62年1月16日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
東京地裁 |
判示 |
一部容認
一部棄却 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
利用客 |
天候等の状況 |
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ID:192[mid:48]