事故事例の詳細
事故概要
洗濯物を干すときには,2階の窓(窓までの腰高は約73センチメートルで,手すりはない。)の外に取り付けてあった竿受け金具に物干し竿を渡し,その竿に干していたところである。
被害者は、洗濯物を干している時に本件窓から転落し,死亡した。
この事故の事故パターン
|
事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
|
窓枠が低い |
窓から落ちる |
墜落(ベランダや屋上などの高所から落下すること) |
|
事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
集合住宅の共有部等 |
場所 |
その他室内 |
建築部位 |
窓 |
障害程度 |
死亡 |
|
|
判例の詳細
- 責任の所在
- 建物所有者
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
本件窓を洗濯物を干すために利用しており,しかも,竿受け金具が錆び付いて伸縮できなくなっていたところから,身体を戸外に伸び出す姿勢を取ることになるので,「本件竿受けに設置した物干し竿に洗濯物を干すには一定程度の危険性があったことは否めないから,本件窓の外に手すり等を設置して,転落防止に備えるべきであったものである。」と認定し、「本件窓に手すりや柵等が設置されていなかったことは,転落防止という観点からしてその安全性が十分なものでなかったということにならざるを得ない」から瑕疵がある。
- 過失相殺
- 被害者にも重大な過失があったとして、被害者の過失割合を9割と認定し、過失相殺をしている。
判例の解説
- 事案の概要
- 被害者は、2階建てアパートの賃借人の妻である。被害者は,洗濯物を干すときには,2階の窓(窓までの腰高は約73センチメートルで,手すりはない。)の外に取り付けてあった竿受け金具に物干し竿を渡し,その竿に干していたところである。
被害者は、洗濯物を干している時に本件窓から転落し,死亡した。
被害者の遺族がアパート所有者に対し、本件窓に手すりがないことが建物の欠陥であると主張して,工作物責任に基づき損害賠償請求をした事案である。
- 裁判所の判断
- ① 裁判所は、「本件窓の腰高は(建築基準法の)基準の範囲内であるものということができるし,また,採光や通風,さらには居室の開放感等の見地からしても,窓の腰高を余り高くすることはできないし,相当でもないものといわなければならない。そうであれば,約73センチメートルという本件窓の腰高自体を瑕疵とみなすことはできない。本件窓の腰高は約73センチメートルあることから,それ自体は欠陥とはいえない」としつつ、
② 本件窓を洗濯物を干すために利用しており,しかも,竿受け金具が錆び付いて伸縮できなくなっていたところから,身体を戸外に伸び出す姿勢を取ることになるので,「本件竿受けに設置した物干し竿に洗濯物を干すには一定程度の危険性があったことは否めないから,本件窓の外に手すり等を設置して,転落防止に備えるべきであったものである。」と認定し、「本件窓に手すりや柵等が設置されていなかったことは,転落防止という観点からしてその安全性が十分なものでなかったということにならざるを得ない」ことから、本件窓の設置・保存の瑕疵の存在を認めた。
③ ただし,被害者にも重大な過失があったとして、被害者の過失割合を9割と認定し、過失相殺をしている。
- 本判決のポイント
- 建築基準法に従ったものであっても、具体的な事情からより高度な安全性確保措置を講じられていないことが工作物の瑕疵に当たるとされている点が参考になる。
事件番号・判例時報 |
平成18年(ネ)229号
|
裁判年月日 |
平成19年3月20日 |
事件名 |
損害賠償請求控訴事件 |
裁判所名・部 |
福岡高裁 |
判示 |
破棄自判 |
|
原審事件番号 |
平成17(ワ)236 |
原審裁判所名 |
福岡地方裁判所 小倉支部 |
原審結果 |
棄却 |
被害者 |
居住者 |
天候等の状況 |
|
|
ID:195[mid:106]