事故事例の詳細

事故概要

入院中の患者(71歳)が、病室(六人部屋)の窓から地面に落下し、頭蓋骨骨折等により死亡した。

 病室の窓は地面から一〇メートル余りの高さがあったが、被害者が寝ていたベッド(上半身部分を斜めに起き上がらせることができた)は窓枠の下に縦方向を壁に接着して配置されており、ベッドの窓側の手すりも取りはずしてあり、窓にも格子や手すりは取り付けられていなかった。 



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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 病院  
場所 その他室内  
建築部位 窓  
障害程度 死亡  
事故にあった方 年齢  
性別  

判例の詳細

責任の所在
建物所有者(病院)
瑕疵・過失の有無
瑕疵あり

病院は、被害者が両下肢麻痺で入院しているにもかかわらず、上記義務を怠り、本件ベッドをこれと高低差があまりない窓の下に接して配置し、ベッドにも窓にも手すりを設置していなかったことから、本件病室はこれが通常備えるべき安全性を欠いていたものというべきであり、工作物の設置・保存の瑕疵がある。

判例の解説

事案の概要
入院中の患者(71歳)が、病室(六人部屋)の窓から地面に落下し、頭蓋骨骨折等により死亡した。被害者遺族が病院に対し、工作物責任に基づく損害賠償を請求した事案である。

なお、病室の窓は地面から一〇メートル余りの高さがあったが、被害者が寝ていたベッド(上半身部分を斜めに起き上がらせることができた)は窓枠の下に縦方向を壁に接着して配置されており、ベッドの窓側の手すりも取りはずしてあり、窓にも格子や手すりは取り付けられていなかった。
裁判所の判断
裁判所は、

① 人の診療に当たる病院においては、患者の生命、身体の安全確保をはかるべき義務があり、本件のように両下肢麻痺で入院している患者の場合には、その使用するベッドは、窓から離して配置するか、窓に接して配置する場合には窓ないしベッドに手すりを設置するなどして物的設備を安全に整えることにより、同人が窓の外に転落する事故を防止すべき義務があるものというべきであるとした上で、

② 本件では、病院は、被害者が両下肢麻痺で入院しているにもかかわらず、上記義務を怠り、本件ベッドをこれと高低差があまりない窓の下に接して配置し、ベッドにも窓にも手すりを設置していなかったことから、本件病室はこれが通常備えるべき安全性を欠いていたものというべきであり、工作物の設置・保存の瑕疵があるとした。
事件番号・判例時報 平成3年(ワ)67号

881号183頁 
裁判年月日 平成7年3月28日 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 高知地裁 
判示 認容 
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者 入院患者 
天候等の状況  
ID:297[mid:59]