事故事例の詳細
事故概要
統合失調症で入院中の患者が、病院5階にある病室内の窓ガラスを自ら割って飛び降り死亡した。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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ガラスを突き破る |
窓から落ちる |
墜落(ベランダや屋上などの高所から落下すること) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
病院 |
場所 |
その他室内 |
建築部位 |
窓 |
障害程度 |
死亡 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 建物所有者
病院
- 瑕疵・過失の有無
- 過失無し
精神科医療においては,必然的に自殺行為に及ぶ患者が存在するのであるから,医療側には患者の自殺を防止するため適切に監視すべき義務が一般的に課せられているといえるが、本件では、患者に自殺行為に出る具体的現実的危険性があったとは認められないことなどから,病院側に過失はない。
瑕疵無し
ア 本件病棟には強化ガラスではないが、これは行政規制上違法とされているとは認めがたいし,その他本件病棟に網入りガラスを使用しなければならないとする特段の事情も存しないこと
イ 自殺の切迫した危険性を有する患者は隔離室に収容したり拘束したりすることが予定されていること
から、随時監視体制を取っている本件閉鎖病棟において,収容している患者が5階のはめ殺しの窓ガラスを破って飛び降りて自殺を図るといった通常予想できない事態を万全に防止することができなかったからといって瑕疵があるとは言えない。
判例の解説
- 事案の概要
- 統合失調症で入院中の患者が、病院5階にある病室内の窓ガラスを自ら割って飛び降り死亡した。遺族が、病院側に対し、患者の自殺を予見できたにもかかわらず適切な措置をとらなかったこと、窓ガラスには鉄格子が設置されておらず,強化ガラスでもなかったことから,病室に鉄格子や強化ガラスを設置しなかったことなどを根拠に、診療看護契約上の債務不履行又は工作物責任に基づいて,損害賠償を請求した事案である。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 精神科医療においては,必然的に自殺行為に及ぶ患者が存在するのであるから,医療側には患者の自殺を防止するため適切に監視すべき義務が一般的に課せられているといえるが、本件では、患者に自殺行為に出る具体的現実的危険性があったとは認められないことなどから,病院側に過失はないとした。
② また、工作物責任については、
ア 本件病棟には強化ガラスではないが、これは行政規制上違法とされているとは認めがたいし,その他本件病棟に網入りガラスを使用しなければならないとする特段の事情も存しないこと
イ 自殺の切迫した危険性を有する患者は隔離室に収容したり拘束したりすることが予定されていること
から、随時監視体制を取っている本件閉鎖病棟において,収容している患者が5階のは
め殺しの窓ガラスを破って飛び降りて自殺を図るといった通常予想できない事態を万全
に防止することができなかった工作物責任を否定した。
事件番号・判例時報 |
平成13年(ワ)1449
最高裁HP |
裁判年月日 |
2004/03/31
2003/03/14 |
事件名 |
損害賠償請求 |
裁判所名・部 |
広島地裁 |
判示 |
棄却 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
入院患者 |
天候等の状況 |
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ID:308[mid:81]