事故事例の詳細
事故概要
郵政省職員の厚生施設として国が設置管理していたプールで、利用していた子供が大人用プールで遊泳中に溺死した。本件プールは子供用プールと大人用プールとにわかれており、両者の間にはベンチを兼ねたコンクリート製の高さ〇・三メートル幅〇・六四メートル長さ二五メートルの仕切壁以外には往来を阻害する設備はなされていなかった。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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貯水槽・池・プールなどの管理 |
水の中に落ちる |
その他(火傷・感電・溺水・中毒など) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
公共施設 |
場所 |
水回り(キッチン・トイレ・風呂) その他場所 |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
死亡 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 国
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
本件プールは
ア 一日平均三〇〇名から四〇〇名程度の利用者があつたにもかかわらず、監視員は大学生一名であり、かつ、入場者の受付も兼ねていたこと、
イ 同監視員のプールの巡視、その他監視のあり方についても、直接指導に当る上司をおくこともなく日々これに指示注意を与えることもなくていわば監視の態度、方針につき若い同人に一任する形をとつており、同監視員は自発的に三〇分毎に一回程度プールを見回ることはしていたもののその際プールサイドや監視台(事故当時は未だ設置されていなかつた)に立ちプールの状況を見守るといつたことなどは全くなしていないこと、
ウ 保護者につき同伴者数の制限は全くなされていなかつたこと
から、本件プールの監視体制としては、監視員を二名或いは交替要員をも含めて三名程度配置し、同監視員をして常時プールを巡回させるか、又は監視台上から絶えずプールの状況に注目させ、事故の発生を目撃した場合には直ちに現場に駆けつけて、救助し得る状態にしておくことが必要であつたと考えられ、これらの措置を講じていない点において、本件プールは安全性確保上通常備うべき人的施設を欠いているものと言わざるを得ない。よって営造物に瑕疵がある。
- 過失相殺
- 被害者側の保護者につき過失を認め、過失相殺(4割)している。
判例の解説
- 事案の概要
- 郵政省職員の厚生施設として国が設置管理していたプールで、利用していた子供が大人用プールで遊泳中に溺死したことから、被害者遺族が国に対し損害賠償を請求した事案である。本件プールは子供用プールと大人用プールとにわかれており、両者の間にはベンチを兼ねたコンクリート製の高さ〇・三メートル幅〇・六四メートル長さ二五メートルの仕切壁以外には往来を阻害する設備はなされていなかった。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 往来を阻止する柵等が設けられていなくても、保護者の同伴により入場の許可したり、十分な監視員の配置を行われていれば瑕疵とはいえないとした上で、
② 本件プールは
ア 一日平均三〇〇名から四〇〇名程度の利用者があつたにもかかわらず、監視員は大学生一名であり、かつ、入場者の受付も兼ねていたこと、
イ 同監視員のプールの巡視、その他監視のあり方についても、直接指導に当る上司をおくこともなく日々これに指示注意を与えることもなくていわば監視の態度、方針につき若い同人に一任する形をとつており、同監視員は自発的に三〇分毎に一回程度プールを見回ることはしていたもののその際プール・サイドや監視台(事故当時は未だ設置されていなかつた)に立ちプールの状況を見守るといつたことなどは全くなしていないこと、
ウ 保護者につき同伴者数の制限は全くなされていなかつたこと
から、本件プールの監視体制としては、監視員を二名或いは交替要員をも含めて三名程度配置し、同監視員をして常時プールを巡回させるか、又は監視台上から絶えずプールの状況に注目させ、事故の発生を目撃した場合には直ちに現場に駆けつけて、救助し得る状態にしておくことが必要であつたと考えられ、これらの措置を講じていない点において、本件プールは安全性確保上通常備うべき人的施設を欠いているものと言わざるを得ないとした。
③ よって、営造物に瑕疵があるものとして、損害賠償を認めた。
④ ただし、被害者側の保護者につき過失を認め、過失相殺(4割)している。
事件番号・判例時報 |
昭和44(ワ)6990
昭和44年(ネ)3034
18巻12号 |
裁判年月日 |
昭和47年11月15日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
大阪地裁 東京高裁 |
判示 |
一部容認 一部棄却 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
利用者 |
天候等の状況 |
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ID:171[mid:14]