事故事例の詳細
事故概要
幼児(4歳と6歳)が河川の排水機場の導水路内でアメンボ採り等をして遊んでいたところ、一人が導水路南側に接するコンクリート堰の南側斜面を滑り落ちて沈砂池にはまり、これを助けようとしたもう一人も同様に右斜面を滑り落ち、右両名とも溺死した。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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貯水槽・池・プールなどの管理 |
水の中に落ちる |
その他(火傷・感電・溺水・中毒など) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
工場・倉庫等 |
場所 |
外構・アプローチ その他場所 |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
死亡 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 施設の設置管理者の営造物責任を認めた。
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵有り
(理由)
・当該施設における本来の侵入防止設備が未完成であり、その代替措置として採られてい
た安全対策は、いずれも不十分であること
・沈砂池等は事故当時幼児にとって誘惑的な存在であるとともに、危険性が高かったものであること
- 過失相殺
- 7割
・被害者側にも沈砂池が外部からの侵入を禁じていることは認識可能であったこと
・保護者も遊んでいた幼児らの動静に留意していれば、本件事故の発生を未然に防止することができたこと
- 損害賠償の範囲
- -
判例の解説
- 事案の概要
- 幼児(4歳と6歳)が河川の排水機場の導水路内でアメンボ採り等をして遊んでいたところ、一人が導水路南側に接するコンクリート堰の南側斜面を滑り落ちて沈砂池にはまり、これを助けようとしたもう一人も同様に右斜面を滑り落ち、右両名とも溺死した。そこで両名の両親が、本排水机場を設置管理する地方公共団体に対し損害賠償を請求した事案である。
- 裁判所の判断
- 1 本件機場内に設置された沈砂池には、雨水が貯留しており水深が約2メートルあり、その周囲には手を掛けるところもなく、幼児がここにはまった場合には、独力で這い上がることが困難であるから、右沈砂池に幼児が立ち入った場合には人命に対する危険性が高く、さらに、貯留水は混濁等していて、その危険性はより高かったといわなければならない。また、本件機場内の導水路等が周辺住民の幼児にとって誘惑的な存在であったと考えられる。
2 本件機場の門扉は、子供が右の隙間を涌り抜けることは容易である一方で、本来の侵入防止設備は未完成の状態にあり、設置管理者としては、幼児が門扉を乗り越え又はその東側の隙間を通り抜けて、本件機場内に侵入することを防止するため、未完成のフェンス等に代わるべき十分な侵入防止措置を講じる義務があったというべきである。
しかしながら、設置されていた安全ロープや看板は侵入防止に不十分なものであり、担当職員による巡回は、いわば片手間的に行われていたに過ぎなかったこと等から判断すれば、代替の侵入防止措置が十分に講じられていたと認めることはできない。
したがって、被害者が本件機場内に侵入したことが、その管理者の予測を超えた行動とすることはできず、結局、本件機場は営造物として通常有すべき安全性を欠いていたものであって、本件事故当時における本件機場の管理には瑕疵があったというべきである。
3 ただし、被害者側にも沈砂池が外部からの侵入を禁じていることは認識可能であったこと、保護者も遊んでいた幼児らの動静に留意していれば、本件事故の発生を未然に防止することができたことなどを勘案すれば過失がある(過失相殺7割)。
- 本判決のポイント
- 施設の設置管理者には、本来その施設につき講ずる予定の安全確保設備が未完成であるならば、それに代わるべき十分な措置を講じる義務あるとし、それが不十分であった場合には管理の瑕疵に当たるとしている点が参考になる。
事件番号・判例時報 |
平成2年(ワ)第59号 |
裁判年月日 |
平成4年7月17日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
佐賀地方裁判所 |
判示 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
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天候等の状況 |
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ID:1491[mid:]