事故事例の詳細
事故概要
子供(当時3歳11ヶ月)が、午後二時二〇分ころ、分譲地内に設置された住居近くの汚水処理場の施設正門の通用扉を押し開けて施設内に立ち入って、遊んでいるうち、曝気槽に誤って転落し、溺死した。
この事故の事故パターン
|
事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
|
貯水槽・池・プールなどの管理 |
水の中に落ちる |
その他(火傷・感電・溺水・中毒など) |
|
事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
集合住宅の共有部等 |
場所 |
外構・アプローチ 水回り(キッチン・トイレ・風呂) |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
死亡 |
|
|
判例の詳細
- 責任の所在
- 工作物占有者
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
本件施設につき、
ア 施設の四囲は、コンクリート塀、崖、石垣及び鉄扉で囲繞されていたのであるが、鉄扉中の通用扉は、本件事故の二週間ぐらい前から施錠されることなく放置されていたのであるから、幼児といえども容易に右通用扉を押し附けて本件施設に立ち入って、満水の前記曝気槽に接近することが可能な状態であったこと、
イ これらのコンクリート塀及び鉄扉の存在は、社会通念上立入禁止の警告機能や制止機能をもつといえるが、事理を弁識する能力を備えていない満三、四歳程度の幼児に対し同様に当てはめることはできないこと
から、本件施設に保存の瑕疵がある。
判例の解説
- 事案の概要
- 子供(当時3歳11ヶ月)が、午後二時二〇分ころ、分譲地内に設置された住居近くの汚水処理場の施設正門の通用扉を押し開けて施設内に立ち入つて、遊んでいるうち、曝気槽に誤つて転落し、溺死した。被害者遺族が、施設の直接占有者と間接占有者に対し、工作物責任に基づき損害賠償を請求した事案である
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 本件施設は公道に面して存在するのみならず、近くには団地があつて、「団地居住者の家庭の幼児、児童等の年少者が接近しやすい揚所的環境にあつたのであるから、これら年少者が本件施設に立ち入つて前記曝気槽に転落することのないように十分な侵入防止設備を施すことを要し、右侵入防止設備に欠けるところがあれば、本件施設について通常予想される危険を防止するに足る設備を欠く瑕疵あるものというべきである。」とした上で、
② 本件施設につき、
ア 施設の四囲は、コンクリート塀、崖、石垣及び鉄扉で囲繞されていたのであるが、鉄扉中の通用扉は、本件事故の二週間ぐらい前から施錠されることなく放置されていたのであるから、幼児といえども容易に右通用扉を押し附けて本件施設に立ち入つて、満水の前記曝気槽に接近することが可能な状態であったこと、
イ これらのコンクリート塀及び鉄扉の存在は、社会通念上立入禁止の警告機能や制止機能をもつといえるが、事理を弁識する能力を備えていない満三、四歳程度の幼児に対し同様に当てはめることはできないこと
から、本件施設に保存の瑕疵があると判断した。
③ なお、民法七一七条一項にいう工作物の「占有者」には、文言上何らの限定もないから、直接占有者のみならず、間接占有者も含まれるものと解すべきであるが、間接占有者は、直接占有者が免責されるときにのみ第二次的に責任を負担するものと解するのが相当であるから、直接占有者に免責事由がない本件においては、直接占有者のみが賠償の責任を負い、間接占有者である所有者は責任を負わないとした。
事件番号・判例時報 |
昭和49年(ワ)783
352号263頁 |
裁判年月日 |
昭和51年9月9日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
横浜地裁 |
判示 |
一部棄却 |
|
原審事件番号 |
|
原審裁判所名 |
|
原審結果 |
|
被害者 |
幼児 |
天候等の状況 |
|
|
ID:180[mid:25]