事故事例の詳細
事故概要
本件は、ホテルの宿泊客が、客室に戻るために、浴場出入口横の階段をホテル備付の浴衣とスリッパを着用して上っていた際に、階段から転落して死亡したことから、被害者の相続人が,ホテルの設置・運営会社に対し、工作物責任または宿泊契約上の安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求した事案である。
この事故の事故パターン
|
事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
|
その他・詳細不明 |
その他・詳細不明 |
転落(階段から転がり落ちること) |
|
事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
ホテル・旅館 |
場所 |
その他場所 |
建築部位 |
階段 |
障害程度 |
死亡 |
|
|
判例の詳細
- 責任の所在
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵なし
・事故現場の階段の幅,蹴上げ及び踏面の寸法や手すりの位置は,いずれも建築基準法所定の基準に適合すること
- 損害賠償の範囲
- なし
・被害者自身が一定の転倒リスクを抱えていたこと
判例の解説
- 事案の概要
- ホテルの宿泊客がホテル(以下「本件ホテル」という。)建物内の客室に戻るために浴場出入口横の階段(以下「本件階段」という。)を、ホテル備付の浴衣とスリッパを着用して上っていた際に、本件階段から転落して(以下「本件事故」という。)死亡したことから、被害者である宿泊客の相続人が,ホテルの設置・運営会社に対し、工作物責任または宿泊契約上の安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求した事案である。
- 裁判所の判断
- 1 訴訟提起後に当事者双方の訴訟代理人等の立会いの上で専門の業者によって現地測定が行われた調査結果等によれば,本件階段の幅,蹴上げ及び踏面の寸法や手すりの位置は,いずれも建築基準法・同法施行令所定の基準に適合するものと認められ,直ちに階段として通常有すべき安全性を欠いているとは認め難い。
2 被害者は、本件事故の前日から事故の際に着用していた浴衣及びスリッパを着用して本件ホテル内で行動しており,これらを着用して行動することが直ちに転倒につながるものとはいい難い一方で,被害者は本件事故当時80歳の高齢者であり,様々な既往症を抱えていたこと、過去にも転倒事故を起こしていたことに照らすと,被害者自身が一定の転倒リスクを抱えていたことは否定し難く,原告らが主張する瑕疵や被害者が着用していた浴衣・スリッパが原因で被害者が転倒ないし転落したものであると合理的に推認することは困難といわざるを得ない。そうすると,仮に瑕疵や安全配慮義務違反が存することが認められたとしても,それらが原因で本件事故が発生したものと認めることは困難である。
- 本判決のポイント
- 建物内の設備が建築基準法所定の基準に適合していること、仮に瑕疵や安全配慮義務違反があったとしても、被害者の属性等から、瑕疵等と事故との間に因果関係は認められないことから、結論としてホテルの設置運営会社側の責任が否定されたことに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 |
平成30年(ワ)第21666号 |
裁判年月日 |
2021/5/20 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
東京地方裁判所判決 |
判示 |
|
|
原審事件番号 |
|
原審裁判所名 |
|
原審結果 |
|
被害者 |
|
天候等の状況 |
|
|
ID:2083[mid:]