事故事例の詳細

事故概要

本件は、飲食店で食事中に、店内に設置されていた可動壁が転倒して右側頭部に衝突した事故により負傷した利用客が、飲食店経営者に対し、工作物責任、不法行為または飲食物供給契約上の付随義務としての安全配慮義務違反の債務不履行に基づき、損害賠償を請求した事案である。 



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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 店舗・娯楽施設等  
場所 その他室内  
建築部位 柱・壁・間仕切り  
障害程度   
事故にあった方 年齢 45歳 
性別 女性 

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
瑕疵あり
・本件可動壁は、その構造上、横木及びレールが固定された位置において建物と一体化して使用されるものであり、土地上の工作物に当たること
・本件可動壁を構成する扉の大きさや重さに対しレールの溝が浅すぎたこと
・扉がレールから外れないようにする防止機構が設置されていないこと
過失相殺
なし

判例の解説

事案の概要
飲食店で食事中に、店内に設置されていた可動壁(以下「本件可動壁」という。)が転倒して右側頭部に衝突した事故(以下「本件事故」という。)により負傷した利用客である原告が、飲食店経営者に対し、工作物責任、不法行為または飲食物供給契約上の付随義務としての安全配慮義務違反の債務不履行に基づき、損害賠償を請求した事案である。
裁判所の判断
1 本件可動壁は、その構造上、横木及びレールが固定された位置において建物と一体化して使用されるものであり、引き戸の扉をレールでスライドさせて動かす範囲内でのみ可動させることが予定され、建物の他の位置や建物外に移動させて用いることはおよそ予定されていないことからすると、土地上の建物に定着し、建物と一体となって機能しているものであるから、「土地の工作物」に当たる。


2 本件可動壁の扉部分が、個室の利用客から押されただけでレールから外れ、ダイニングルーム側へ転倒したという本件事故の状況に加え、その転倒の原因は扉の大きさ及び重さに対しレールの溝が浅すぎたこと並びに扉がレールから外れないようにする防止機構が設置されていないことにあったことも考慮すると、本件可動壁の設置について、通常有すべき安全性を欠いていたことは明らかである。


3 したがって、「土地の工作物」である本件可動壁の「設置」に「瑕疵」があり、これにより本件事故が発生したと認められるから、本件可動壁の占有者である飲食店経営者は、本件事故により原告に生じた損害につき賠償する義務を負うものというべきである。
(ただし、飲食店側が被害者に対し裁判所が認める損害額以上の損害賠償金を支払っていたことから、裁判そのものは請求棄却となったところである。)
本判決のポイント
土地上の建物に定着し、建物と一体となって機能している設備(本事案では可動壁)は「土地の工作物」に該当しうるとし、当該設備等が通常有すべき安全性を欠いている場合には工作物責任が生じるとしていることに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 令和元年(ワ)第26438号 
裁判年月日 2022/6/28 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 東京地方裁判所判決 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2076[mid:]