事故事例の詳細
事故概要
掃除をさぼって、校舎2階の階段近くの廊下において、同級生にプロレス技の逆エビ固めをかけて遊んでいた同級生を注意した被害者が、その同級生に追いかけられ、教室の窓から二階の庇に飛び下り非常階段に渡って逃げようとして、本件窓から飛び下りる瞬間、背後から走ってきた同級生に押される形となり、被害者は勢い余って二階の庇に接触することなく、八メートル下の地面に両足から落下して負傷した。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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(人の立ち入りが想定されない高所) |
手すりなどがなく落ちる |
墜落(ベランダや屋上などの高所から落下すること) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
学校 |
場所 |
バルコニー・屋上・その他高所 |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
中度のケガ |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 学校側及び学校の設置管理者の責任は否定された(同級生の責任は認められた)
- 瑕疵・過失の有無
- 学校側の過失及び営造物の瑕疵はなし
(理由)
・学校側には、右指導・注意をする以上に防護パイプを設置し、防護ネットを張る等の措置を採るべき義務はなく、また、同指導・注意をしたにもかかわらず、生徒が前記のような行動パターンをとることを予見すべき義務もなかったこと
・およそ被害者の当該営造物の通常の用法に反した、設置管理者の通常予測できない行動によって事故が発生した場合は、右営造物につき設置又は管理の瑕疵を認めることはできないこと
・教室の床面から本件窓の桟の高さは1メートル11センチメートルであって、生徒が誤って上半身を乗り出して転落するのを防止するのに十分な高さを有しており、その本来の用法に照らすと、本件窓には通常有すべき安全性に欠けるところはなかった
- 過失相殺
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- 損害賠償の範囲
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判例の解説
- 事案の概要
- 掃除をさぼって、校舎2階の階段近くの廊下において、同級生にプロレス技の逆エビ固めをかけて遊んでいた同級生を注意した被害者が、その同級生に追いかけられ、教室の窓から二階の庇に飛び下り非常階段に渡って逃げようとして、本件窓から飛び下りる瞬間、背後から走ってきた同級生に押される形となり、被害者は勢い余って二階の庇に接触することなく、八メートル下の地面に両足から落下して負傷した。
そこで被害者は、本件窓の設置管理者に対し、国家賠償法1条及び2条に基づく損害賠償請求をした事案である。(あわせて同級生に対しては不法行為に基づく損害賠償を請求すしている)
- 裁判所の判断
- 1 従前からその中学校では、本件窓から二階の庇に下り立ち、そこからすぐ隣の非常階段に移るという行動パターンをとる生徒がいて、そのことが職員朝礼会議で報告されたこと、そこで同中学校校長は、その後の全校集会で、同中学生徒全員に対し、そのような危険な行為をしないようにとの趣旨の指導・注意を与えたことなどからすれば、中学校校長は、本件における被害者のような行動を採らないよう全生徒に対し事故防止についての指導・注意をしていたというべきである。
また、中学生にもなれば、校舎三階の窓から二階の庇に下りるという行動がいかにも危険なものであり、学校生活の中において許されない行動であるかとういうことは、教師から注意・指導されるまでもなく十分認識できることであるから、中学校側には、上記指導・注意をする以上に防護パイプを設置し、防護ネットを張る等の措置を採るべき義務はなく、また、上記指導・注意をしたにもかかわらず、生徒が被害者のような行動パターンをとることを予見すべき義務もなかったというべきである。よって国賠法1条による請求は理由がない。
2 国家賠償法二条にいう「営造物の設置又は管理の瑕疵」とは当該営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情が総合考慮されて具体的個別的に判断されることになるが、およそ被害者が通常の用法に反し、設置管理者の通常予測できない行動によって事故が発生した場合は、右営造物につき設置又は管理の瑕疵を認めることはできないものである。
本件では、教室の床面から本件窓の桟の高さは1メートル11センチメートルであって、生徒が誤って上半身を乗り出して転落するのを防止するのに十分な高さを有していおり、その本来の用法に照らすと、本件窓には通常有すべき安全性に欠けるところはない。また、本件事故は、本件窓の桟を乗り越えて二階の庇に下りるという、その通常の用法に反する被害者の行為によって発生したものである。そして、全校集会においてこれを禁止する指導・注意が与えられていたのであるから、中学校校舎の設置管理者としては、それにもかかわらず、被害者がこのような行動をとるとは通常予測できなかったというべきであり、営造物の管理に瑕疵はなく、国家賠償法二条に基づく請求も理由がない。
(参考)
なお、本件事故は、被害者の本件窓から飛び下りようとした過失行為と、同級生が被害者を追いかけて手を延ばし被害者を押してしまった過失行為とが重なって発生したと認められるとして、同級生に対する損害賠償請求は認められた。
- 本判決のポイント
- 被害者が通常の用法に反し、設置管理者の通常予測できない行動によって事故が発生した場合は、営造物の設置管理の瑕疵を認めることはできないとしている点が参考になる。
事件番号・判例時報 |
平成8年(ネ)第237号 |
裁判年月日 |
平成9年5月23日 |
事件名 |
損害賠償請求控訴事件 |
裁判所名・部 |
高松高等裁判所 |
判示 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
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天候等の状況 |
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ID:1488[mid:]