事故事例の詳細
事故概要
市が発注した下水道築造工事業者が、家庭内排水の汚水枡を設置するため前日から穴を掘り、その上に転落防止のため幅二〇センチメートル、厚さ一子五センチメートル、長さ二メートルくらいの木矢板(道板)数枚を並べて渡していたが、本件事故当時は作業の途中であり、道板を固定するため夜間は打ちつけてある横板が取り外されていた。そこに自転車で本件事故現場の近くまで市道の車道の左端を進行して来て、歩道に進路を変え、同所の道板の上をそのまま通過しようとした被害者が、たまたま道板がずれて出来ていた隙間に自転車の前輪がはまりこみ、そのため転倒して左顔面を打って受傷した。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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床面の凹、穴、溝 |
つまづく |
転倒(床の上で転ぶこと) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
その他 |
場所 |
その他場所 |
建築部位 |
段差のある床 その他 |
障害程度 |
中度のケガ |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 道路管理者及び工事業者の責任が認められた。
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
(理由)
・市も工事業者も道路の占有者といえること
・自己現場の穴は工作物といえること
・その穴に渡してあった道板の間に隙間があった以上、穴への転落、転倒の危険があり、その工作物が通常有すべき安全性を欠いていたと認められること
- 過失相殺
- 3割
・本件事故現場の歩道に自転車及び歩行者専用の規制標識はなく、本来、自転車は車道を通行すべきであったこと、
・本件事故現場には穴の上に道板が渡してあり、段差ができ、不安定であったからあえてその上を自転車に乗ったまま通ることはなかったこと、
判例の解説
- 事案の概要
- 市が発注した下水道築造工事業者が、家庭内排水の汚水枡を設置するため前日から穴を掘り、その上に転落防止のため幅二〇センチメートル、厚さ一子五センチメートル、長さ二メートルくらいの木矢板(道板)数枚を並べて渡していたが、本件事故当時は作業の途中であり、道板を固定するため夜間は打ちつけてある横板が取り外されていた。そこに自転車で本件事故現場の近くまで市道の車道の左端を進行して来て、歩道に進路を変え、同所の道板の上をそのまま通過しようとした被害者が、たまたま道板がずれて出来ていた隙間に自転車の前輪がはまりこみ、そのため転倒して左顔面を打って受傷した。そこで、被害者が、市と工事業者に対し損害賠償を請求した事案である。
- 裁判所の判断
- 1 本件事故現場の穴は、土地に人工的作業を加えて成立した物であって、「土地ノ工作物」に該当することが認められ、かつ、その穴に渡してあった道板の間に隙間があった以上、穴への転落、転倒の危険があり、その工作物が通常有すべき安全性を欠いていたと認められる。
2 市は本件事故現場の市道を管理しており、道路である以上工事を発注していてもそれによって自己の道路に対する事実上の支配を失うことはないこと、工事内容からも受注者が用地を排他的に占有することは予定されていなこと、一般に市は、発注した工事について監督権限を有していると推認できること、から考えると、市には、国家賠償法二条の責任が、工事業者には、本件事故現場の穴を工事現場として直接占有していたのであって、その占有者として民法七一七条の責任があるというべきである。
3 ただし、本件事故現場の歩道に自転車及び歩行者専用の規制標識はなく、本来、自転車は車道を通行すべきであったこと、本件事故現場には穴の上に道板が渡してあり、段差ができ、不安定であったからあえてその上を自転車に乗ったまま通ることはなかったこと、を考慮すると、被害者にも過失がある(過失相殺3割)。
- 本判決のポイント
- 土地上の「穴」についても土地に人工的作業を加えて成立した物であって「土地ノ工作物」に該当するとしている点や、道路等の施設管理者は、工事を発注していても工事内容から受注者が当該施設を排他的に占有することは予定されていなことなどの場合には占有者といえるとしている点が参考になる。
事件番号・判例時報 |
平成3年(ネ)第307号 |
裁判年月日 |
平成5年7月27日 |
事件名 |
損害賠償請求控訴事件 |
裁判所名・部 |
福岡高等裁判所 |
判示 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
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天候等の状況 |
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ID:1489[mid:]