事故事例の詳細
事故概要
温泉地で、酒に酔った男性が約一.五メートル下の河川敷への転落防止のために設置されていた高さ四〇センチメートルの丸い鉄パイプに腰かけようとして河川敷にあった荒湯桶に仰向けに転落し火傷で死亡した。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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手すりの上に腰掛ける |
手すりなどの上を越える |
墜落(ベランダや屋上などの高所から落下すること) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
その他 |
場所 |
その他場所 |
建築部位 |
手すり |
障害程度 |
死亡 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 河川敷の設置管理者の責任なし
- 瑕疵・過失の有無
- 無
理由
・防護柵は、その本来の用法である転落防止の機能に欠けるところはなかつたものというべきであること
・本件事故は、被害者のした通常の用法に即しない行動の結果生じたものであること
- 過失相殺
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- 損害賠償の範囲
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判例の解説
- 事案の概要
- 温泉地で、酒に酔った男性が約一.五メートル下の河川敷への転落防止のために設置されていた高さ四〇センチメートルの丸い鉄パイプに腰かけようとして河川敷にあった荒湯桶に仰向けに転落し火傷で死亡した。そこで、被害者の遺族が、河川敷の設置管理者に対し、営造物責任に基づく損害賠償を請求した事案である。
原審では、本件荒湯桶の設置、管理の状況からすれば、本件荒湯桶は、その危険性につき十分な認識を欠く地元の子供らが付近で遊ぶ際誤つてこれに転落したり、また、温泉場の観光名所としての場所柄のため、夜間飲酒酩酊して同所に訪れることの多い観光客等が本件荒湯桶の存在に気付かないまま、誤つて本件防護柵からこれに転落する危険があつたから、本件荒湯桶の湯桶に蓋を取付けるとともに、本件防護柵のうち、少なくとも本件荒湯桶上の部分を従前の二倍程度の高さのものに改める必要があつたものであり、上告人には、本件荒湯桶の設置、管理の瑕疵があり、したがつて、国家賠償法二条一項に基づき、
損害を賠償すべき責任があるとした。
そこで、地方公共団体側が上告した。
- 裁判所の判断
- 1 国家賠償法二条一項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵の有無については、当該営造物の構造、用法、場所的環境等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきである。
2、本件では、遊歩道から荒湯桶に転落するのを防止するため、本件防護柵が設置されており、その材質、高さ、形状等の構造に加え、右遊歩道の状況や荒湯が高温のため危険であることを警告する立札の設置、夜間照明の実施等の措置がとられていたことを考慮すると、本件防護柵は、その本来の用法である転落防止の機能に欠けるところはなかつたものというべきである。
3 一方、被害者は隣町に住む当健康な成年男子であり、本件事故は、同人が右遊歩道上を通行中に発生したものではなく、同人が飲酒により相当酩酊したうえ、近くに休憩用長椅子が三個も用意されていたのに、太さ約二〇センチメートルの丸い鉄パイプが一本通つている構造の本件防護柵に後向きに腰掛けようとして身体の平衡を失い、後
方に転落したというのであつて、同人の行動は、本件防護柵の本来の用法に即したものということができないから、同人の転落死亡事故は、本件荒湯桶の設置管理者である上告人において通常予測できない行動に起因するものであつたということができる。
4 また遊歩道上から本件荒湯桶への転落防止策としては、本件防護柵の設置をもつて足りるものとする以上、右遊歩道上から本件荒湯桶に転落した亡博晟との関係においては、本件荒湯桶に蓋がなかつたことをもつて、その設置、管理について瑕疵があつたものということはできない。
5 以上から、本件営造物につき通常有すべき安全性を欠いていたものということはできず、被害者のした通常の用法に即しない行動の結果生じた事故について、その設置管理者としての責任を負うべき理由はない。
- 本判決のポイント
- ・安全等のための設備については、当該設備の通常の用法に係る機能について安全性を有していればよく、通常の用法に則しない行動によって発生した事故において、当該設備の設置保存に瑕疵はないとしている点が参考になる。
事件番号・判例時報 |
昭和59年(オ)第1482号 |
裁判年月日 |
昭和63年1月21日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
最高裁判所第1小法廷 |
判示 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
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天候等の状況 |
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ID:1479[mid:]