事故事例の詳細
事故概要
中学校の休み時間にグラウンド内の高さ155センチメートルの掲揚台の上にいた1年生が1歩後ろに下がり落下して頭部を強打して死亡した
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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(人の立ち入りが想定される高所) |
手すりなどがなく落ちる |
墜落(ベランダや屋上などの高所から落下すること) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
学校 |
場所 |
バルコニー・屋上・その他高所 |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
死亡 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 中学校を設置する学校法人の責任を認めた。
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
(理由)
・中学校に入学したばかりの生徒が本件掲揚台の上で遊ぶこと,その場合にバランスを崩すなどして転落する可能性があることについては十分に予測することができたこと
・本件掲揚台の上で遊んでいた生徒が転落した場合には,頭部を打って重大な事故が生じるおそれも十分にあったこと
・本件のような転落事故を防止するためには,本件掲揚台に柵を設置するなどの事故防止
措置を執るべきであったところ、学校は,本件事故当時,何ら事故防止措置を執っていなかったこと
- 過失相殺
- 5割
被害者の年齢(13歳) 危険を回避するための適応力をある程度は備えていた
- 損害賠償の範囲
- 被害者の逸失利益と慰謝料を合わせた額(ただし独立行政法人日本スポーツ振興センターから支払われた2800万円を控除)
判例の解説
- 事案の概要
- 中学校の休み時間にグラウンド内の高さ155センチメートルの掲揚台の上にいた1年生が1歩後ろに下がり落下して頭部を強打して死亡した事故で,柵を設置するなどの事故防止措置を執らなかった安全配慮義務違反を認め,中学校を設置する学校法人及び担任教師に対し損害賠償を請求した事案である。
- 裁判所の判断
- 1 被害者のAは本件事故当時中学1年生であり,ある程度危険性の判断能力を備えていたとしても,中学校に入学したばかりの生徒が本件掲揚台の上で遊ぶこと,その場合にバランスを崩すなどして転落する可能性があることについては十分に予測することができたといえる。
また、本件掲揚台の形状等(155センチメートルの高さがあり,正面の下は側溝になっていて,コンクリートの蓋が敷かれていた。また,正面から見て左側は4段の階段
となっていた。本件掲揚台に柵は設置されていなかった。)によれば,本件掲揚台の上で遊んでいた生徒が転落した場合には,頭部を打って重大な事故が生じるおそれも十分にあったといえる。
2 そうすると,本件のような転落事故を防止するためには,被告Y1は,本件掲揚台に
柵を設置するなどの事故防止措置を執るべきであったところ、被告Y1は,本件事故当時,何ら事故防止措置を執らなかったのであるから,被告Y1には安全管理義務違反があったといわざるを得ない。
3 Aは,本件事故当時13歳の生徒で,危険についての事理を弁識し,危険を回避するための適応力をある程度は備えていたものと認められる。そして,Aは本件掲揚台で遊ぶ場合には,危険性のない方法で遊ぶべきであった。ところが,Aは,本件掲揚台の隅に立ち,1歩後ろに下がって転落し,死亡する結果となったものであって,この点はAの過失として斟酌すべきである(過失相殺5割)。
4 なお、担任教師である被告Y2の責任については、担任する生徒に対して学校生活における危険性について一般的な注意をする義務はあるとしても,それ以上に,本件掲揚台という通常の用法に従えば事故が生じるとは考えにくい個別の設備の危険性についてまで,具体的に注意する義務は負わないとして、被告Y2の指導監督義務違反は認められない。
- 本判決のポイント
- 転落等の危険があること、転落すれば重大な事故が生じる危険があることが予測可能であれば、転落防止措置を講じていない場合には工作物の設置保存に瑕疵があると評価されうる点が参考になる。
事件番号・判例時報 |
平成22年(ワ)第73号、平成22年(ワ)第209号 |
裁判年月日 |
平成24年2月10日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
水戸地方裁判所麻生支部 |
判示 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
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天候等の状況 |
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ID:1480[mid:]