事故事例の詳細
事故概要
地方公共団体が管理する公園で子供の世話をしていたところ、別な児童が不安定な状態にあった標識を倒し、これが原告の後頭部及び背部にあたったことから、頸部捻挫、背部挫傷、外傷後ストレス障害(PTSD)の傷害を負った。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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物が固定されていない |
倒れてきたものにぶつかる |
ぶつかり |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
公共施設 |
場所 |
その他場所 |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
重度のケガ |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 地方公共団体の責任を認め、別な児童及びその保護者の責任を否定した。
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
(理由)
・公園や公道に設置されている標識は、通常、基礎部分が地中に埋められており、よほど強い力がかからない限り傾くことはないのに対し、本件標識は基礎部分が埋められておらず、手をかけるとすぐに傾くような不安定な状態であったこと
・他の現場の補修を優先するとしても、このような応急の措置により利用者に危険が及ばないようにすることが可能であったこと
- 過失相殺
- なし
- 損害賠償の範囲
- -
判例の解説
- 事案の概要
- 本件は、原告が地方公共団体が管理する公園で子供の世話をしていたところ、別な児童が不安定な状態にあった標識を倒し、これが原告の後頭部及び背部にあたったことから、頸部捻挫、背部挫傷、外傷後ストレス障害(PTSD)の傷害を負ったとして、地方公共団体に対しては国家賠償法2条1項に基づき、別な児童及びその保護者に対しては民法709条等に基づき、それぞれ原告が被った損害賠償を請求した事案である。
- 裁判所の判断
- 1 国家賠償法二条一項の規定する営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうところ、公園や公道に設置されている標識は、通常、基礎部分が地中に埋められており、よほど強い力がかからない限り傾くことはないのに対し、本件標識は基礎部分が埋められておらず、手をかけるとすぐに傾くような不安定な状態であったのであるから、標識が通常有すベき安全性を欠いている状態であったということができる。
2 地方公共団体は、本件標識が不安定な状態にあることを認識し、事故当日の午後には補修を行う予定で準備をしていたところ、他の現場の補修を優先したことから、本件標識の補修が後回しになったというのであり、また、本件事故の翌日には本件標識を動かないようにチェーンで掲示板に固定して、本件標識が抜かれた穴については穴埋めも行っているのであるから、他の現場の補修を優先するとしても、このような応急の措置により利用者に危険が及ばないようにすることが可能であったと認められる。そうすると、営造物の安全性に欠如があることを認識した後、時間的に管理者において遅滞なく一定の措置を講じて営造物を安全良好な状態に保つことが不可能であったとはいえないから、本件標識の管理に瑕疵があったというべきであり、被告地方公共団体は、本件事故により原告に生じた損害について国家賠償法2条1項に基づく賠償責任を負うというべきである。
3 なお、別な児童については、公園に設置された通常の標識が手を触れただけで傾いたり倒れたりすることはなく、本件標識に手をかけただけで当該標識が倒れることを予見することが可能であったとは認められないことから、その故意又は過失は認められず、不法行為の責任を負うということはできず、その保護者についても同様に不法行為の責任を負うということはできない。
- 本判決のポイント
- 営造物の管理者が、営造物の安全性に欠如があることを認識した後、時間的に遅滞なく一定の措置(応急的な対応)を講じて営造物を安全良好な状態に保つことが不可能であったとはいえない点を捉えて、営造物の管理に瑕疵があったと評価している点が参考になる。
事件番号・判例時報 |
平成18年(ワ)第18806号 |
裁判年月日 |
平成20年7月11日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
東京地方裁判所 |
判示 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
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天候等の状況 |
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ID:1481[mid:]