事故事例の詳細

事故概要

夕方(午後6時45分ころ)両手に買物袋を持って繁華街を歩行中に被告会社の店舗前路上において,被告が当該道路の一部である私有地(建築基準法42条1項5号による位置指定道路部分)上に設置したチェーン柵(一定の場所の区画又は仕切のため金属製
の支柱間にチェーンを渡したもの。)に足をとられて転倒し,左膝蓋骨骨折及び右上腕骨近位端骨折の傷害を負った。 



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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 その他  
場所 外構・アプローチ  
建築部位 平坦な床  
障害程度 重度のケガ  
事故にあった方 年齢  
性別  

判例の詳細

責任の所在
責任なし
瑕疵・過失の有無

理由
・本件チェーン柵それ自体は直ちに危険な工作物ではなく,かつ歩道と車道を区切るという通常の用法にしたがって設置されていたに過ぎないから,明らかに通常有すべき安全性を欠いているとはいえない。
・社会通念上,通行人がこれに足を取られて転倒しないよう注意すべきことを要請されてよい範疇の障害物に過ぎないと考える方が妥当である。
過失相殺
損害賠償の範囲

判例の解説

事案の概要
夕方(午後6時45分ころ)両手に買物袋を持って繁華街を歩行中に被告会社Y1支店前路上において,被告が当該道路の一部である私有地(建築基準法42条1項5号による位置指定道路部分)上に設置したチェーン柵(一定の場所の区画又は仕切のため金属製
の支柱間にチェーンを渡したもの,以下当該チェーン柵を「本件チェーン柵」という。)に足をとられて転倒し,左膝蓋骨骨折及び右上腕骨近位端骨折の傷害を負ったことら、本件事故は土地の工作物である本件チェーン柵の設置又は保存の瑕疵に起因するものであるとして,その占有者である被告に対し損害賠償を請求した事案である。
 なお、原告は、建築基準法44条は「道路内に建築物を建築してはならない」旨規定していること、道路法42条は「道路管理者は,道路を常時良好な状態に保つように維持し,修繕し,もって一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない」としていることから、チェーン鎖の設置はこれらの法令に違反するものであることも、「瑕疵」を根拠づけると主張している。
裁判所の判断
1 本件チェーン柵が設置された道路部分は繁華街で公衆の用に供されている位置指定道路部分であり、かつ、本件土地持分を本件建物の専有部分を第三者に譲渡していたところであるが,土地持分等の譲渡の前後を通じ被告が本件建物の一部を支店として使用占有する実態には変わりがなく,被告支店の行員も当初は同支店の店舗の付属施設と認識していたというのであるから,本件事故当時も,被告は,事実上,本件チェーン柵を管理し,これを占有していたものと認められる。

2 原告は,歩道側から本件チェーン柵を横断しようとした際,支柱間に膝下の高さでチェーンが渡されていることに気付かず,これに足を引っ掛けて本件事故に遭ったことが認められ,かつ,これまで本件と同様に転倒し,あるいは転倒しかかかった者も少なくないと認められるから,本件チェーン柵によって通行人が転倒する危険性のあることは否定できない。

3 しかしながら,本件チェーン柵それ自体は直ちに危険な工作物ではなく,かつ歩道と車道を区切るという通常の用法にしたがって設置されていたに過ぎないから,明らかに通常有すべき安全性を欠いているとはいえない。
本件の場合,繁華街であるという場所的状況,本件チェーン柵の構造・仕様等の個別事情に照らし,社会通念上,通行人がこれに足を取られて転倒しないよう注意すべきことを要請されてよい範疇の障害物に過ぎないと考える方が妥当であると考えられるので,結局,本件チェーン柵は通常有すべき安全性を欠いているとはいえず,これに設置・保存の瑕疵があるとは認められない。

4 なお,本件チェーン柵が建築基準法及び道路法等の法令・通達等に違反することは,瑕疵の有無の判断の1つの要素となることは否定できないものの,本件に直接こられの法令等が適用されるわけではないから,通常有すべき安全性の欠如に係る判断に影響を及ぼすものではない。
本判決のポイント
公共の路上等に設置されたものであっても、事実上管理し占有している設備等についてはその占有者は工作物責任が生じうるとしている点、当該設備が設置されている場所的関係等からは被害者側に一定の注意義務があることとの相関関係において瑕疵の存在を評価している点が参考になる。
事件番号・判例時報 平成15年(ワ)第9855号 
裁判年月日 平成16年3月25日 
事件名 損害賠償等請求事件 
裁判所名・部 東京地方裁判所 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:1486[mid:]