事故事例の詳細
事故概要
観光ホテルの入浴客が8階大浴場の窓からベランダに出たところ、ベランダから転落して死亡した。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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(人の立ち入りが想定される高所) |
手すりなどがなく落ちる |
墜落(ベランダや屋上などの高所から落下すること) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
ホテル・旅館 |
場所 |
バルコニー・屋上・その他高所 |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
死亡 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 建物所有者・占有者(ホテル経営者)
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵有り
本件窓及びベランダは、
ア 窓は開閉が可能であり、かつ、開けたとき、下部から約○・五八六メートルの高さにアルミ製横桟が設置されているけれども、腰を屈めるか、これを少しまたげば簡単にべランダに出られること、
イ ベランダの南西隅床面には上方に向け照明灯が一個設置されているが、べランダには他に転落防止設備は設けられていなかったこと、
ウ 当時浴室にはベランダへの立入を禁止する旨の標識は設置されてなく、更に窓は約五〇センチメートル位開いていたこと、
エ 浴室の窓際に立って外界を眺めても右べランダに遮られて真下が見えないため八階という高度による恐怖感がなく、まして事故があった5月頃の夜間のおいてべランダの前照灯が点灯されると、外界が暗いのにベランダと浴室が明かるいためベランダがあたかも平家建建物における縁側ないし涼み場所であるかのような錯覚を生ぜしめること、
オ したがって飲酒した入浴客等がべランダに出るおそれがあり、しかも一旦入浴客がべランダに出るとベランダの西側端のコンクリート壁の高さは約〇・四メートルにすぎず、人体の重心よりはるかに低いため転落する危険があつたこと
から、工作物の設置・保存に瑕疵がある。
- 過失相殺
- 被害者も通常の人の出入口でない窓から前示のような危険なベランダに出、しかもその中でも危険度の高いべランダ西側端付近に至った過失があるとし、過失相殺(5割)している。
判例の解説
- 事案の概要
- 観光ホテルの入浴客が8階大浴場の窓からベランダに出たところ、ベランダから転落して死亡した。遺族が建物所有者であるホテルに対し、工作物責任に基づく損害賠償を請求した事案である。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 飲酒した入浴客を含む多数の飲食客、宿泊者、休憩者が利用する温泉旅館、料理店、湯屋としての窓およびベランダは、そのような利用客の存在を前提に、安全性が確保されるという認識のもと、
② 本件窓及びベランダは、
ア 窓は開閉が可能であり、かつ、開けたとき、下部から約〇・五八六メートルの高さにアルミ製横桟が設置されているけれども、腰を屈めるか、これを少しまたげば簡単にべランダに出られること、
イ ベランダの南西隅床面には上方に向け照明灯が一個設置されているが、べランダには他に転落防止設備は設けられていなかつたこ
ウ 当時浴室にはベランダへの立入を禁止する旨の標識は設置されてなく、更に窓は約五〇センチメートル位開いていたこと、
エ 浴室の窓際に立つて外界を眺めても右べランダに遮られて真下が見えないため八階という高度による恐怖感がなく、まして事故があった5月頃の夜間のおいてべランダの前照灯が点灯されると、外界が暗いのにベランダと浴室が明かるいためベランダがあたかも平家建建物における縁側ないし涼み場所であるかのような錯覚を生ぜしめること、
オ したがって飲酒した入浴客等がべランダに出るおそれがあり、しかも一旦入浴客がべランダに出るとベランダの西側端のコンクリート壁の高さは約〇・四メートル
にすぎず、人体の重心よりはるかに低いため転落する危険があつたこと
から、工作物の設置・保存に瑕疵があると判断した。
③ ただし、被害者も通常の人の出入口でない窓から前示のような危険なベランダに出、しかもその中でも危険度の高いべランダ西側端付近に至つた過失があるとし、過失相殺(5割)している。
事件番号・判例時報 |
昭和52ワ17号
934号99頁 |
裁判年月日 |
昭和54年3月14日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
福岡地裁八女支部 |
判示 |
一部容認 |
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原審事件番号 |
昭和52(ワ)17
判例一覧表の事件番号にこちらのみ記載なので日付から原審事件番号か? |
原審裁判所名 |
福岡地裁小倉支部
判例一覧表の事件番号にこちらのみ記載なので日付から原審裁判所名か? |
原審結果 |
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被害者 |
利用客 |
天候等の状況 |
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ID:185[mid:31]