事故事例の詳細

事故概要

高層賃貸マンションの消火器が何者かにイタズラで隣家(X所有建物)の屋根に投げ捨てられ、屋根が損傷した。 



この事故の事故パターン

  事故のきっかけ 事故の過程 結果 詳細と留意点
  故意に落とす  物が落ちる  落下物にあたる  事故パターンの詳細と留意点を見る

事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 集合住宅の共有部等  
場所 廊下・ホール  
建築部位 その他  
障害程度   
事故にあった方 年齢  
性別  

判例の詳細

責任の所在
建物所有者
瑕疵・過失の有無
瑕疵あり

ア 本件建物は一五階建ての高層賃貸用マンション(共同住宅)であり、不特定多数の通行が予想される廊下はオープン式であり、その開放された廊下側に極めて近接した位置に原告の建物が存している場合、オープン式廊下から消火器を投下するというイタズラがなされうることは極めて容易に予想されること

イ このような建物の廊下に消火器を設置するには、安易に投下されない設置方法を工夫すべきてあり、例えばボックスに格納するとか、パイプスペース」に収納するなどの設置方法をとらずに、持ち運びに安直な「移動式消火器」を単に高層階のオープン式廊下の壁に立て掛けておいたこと

から、本件消火器の設置方法は、本件建物の立地条件、構造等に照らして適切な設置方法であったとはいえず、土地の工作物の設置、保存に瑕疵がある。

判例の解説

事案の概要
高層賃貸マンションの消火器が何者かにイタズラで隣家(X所有建物)の屋根に投げ捨てられ、屋根が損傷した事件である。Xは右消火器が設置されていた高層賃貸マンションの賃貸人(所有者)に対して、工作物責任に基づく損害賠償を請求した。
裁判所の判断
裁判所は、

① 消火器は、本件マンションに設置されることにより、その機能を発揮することができるため、本件マンションの一部として土地の工作物にあたるとした上で、

② 消火設備の設置方法の適否は、建物の立地条件(周辺事情)、種類、 造、用途、イタズラによる危険性の有無・程度等を総合的に検討したうえて、「作動され易いが、イタズラされ難い」要請に合致した設置方法がとられているか否かによって判断されねばならないとし、

③ 本件では、

 ア 本件建物は一五階建ての高層賃貸用マンション(共同住宅)であり、不特定多数の通行が予想される廊下はオープン式であり、その開放された廊下側に極めて近接した位置に原告の建物が存している場合、オープン式廊下から を投下するというイタズラがなされうることは極めて容易に予想されること

 イ このような建物の廊下に消火器を設置するには、安易に投下されない設置方法を工夫すべきてあり、例えばボックスに格納するとか、パイプスペース」に収納するなどの設置方法をとらずに、持ち運びに安直な「移動式消火器」を単に高層階のオープン式廊下の壁にのまま立て掛けておいたこと

から、本件消火器の設置方法は、本件建物の立地条件、構造等に照らして適切な設置方法であったとはいえず、土地の工作物の設置、保存に瑕疵があったものと判断した。
本判決のポイント
工作物責任における「工作物」の範囲は広く、消火器も工作物に当たる。判例では、ほかにも直接土地に接していない鎧戸やエレベーターなどの内部設備についても工作物と認めている。
事件番号・判例時報 平成5年(ワ)12181

1525号95号

873号200頁 
裁判年月日 平成6年8月19日 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 大阪地裁 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者 隣家所有者 
天候等の状況  
ID:299[mid:63]