事故事例の詳細
事故概要
デパート屋上に備え付けてあった顧客サービス用のアルミパイプ製デッキチェアーに腰を掛けようとした者が、左手で本件デッキチェアーの脚のせ部分のパイプをつかみ、体を支えるようにして後向きに腰をおろしたところ、その左手第四指がパイプの部分とデッキチェアーの角度調節部分パイプとの間にはさまり、その先端部約一センチメートルが切断され、左手第四指第一指関節切断の傷害を受けた。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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挟まれるすき間がある |
すき間に挟まれる |
挟まれ |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
店舗・娯楽施設等 |
場所 |
バルコニー・屋上・その他高所 |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
重度のケガ |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 建物所有者・占有者(デパート経営者)
- 瑕疵・過失の有無
- 過失なし
本件デッキチェアーを利用する顧客に対し、これが安全利用方法につき特別の指導員を立ち会わせて説明し或いは掲示板、説明書をもって周知せしめるまでの義務はないものというべく、したがって被告が右のような処置を採らなかったからといってこの点につき過失があるとはいえない。
- その他
- デッキチェアーは
ア デパートの顧客に対するサービスとしてその休憩用に床面に固定されることなく備え付けられたものであり、簡単に折りたたむことができその運搬も容易であること
イ 本件デッキチェアーと同種のデッキチェアーに関し傷害事故等なんらの事故も発生したこともなく、販売されたデッキチェアーについて苦情や事故は全く報告されていないこと
からすれば、本件デッキチェアーはその設置個所との定着性は極めて稀薄であるうえ、人に危険を及す性質を有するものとは言えず、したがって民法第七一七条にいわゆる「土地の工作物」には該当しない。
判例の解説
- 事案の概要
- デパート屋上に備え付けてあった顧客サービス用のアルミパイプ製デッキチェアーに腰を掛けようとした者が、左手で本件デッキチェアーの脚のせ部分のパイプをつかみ、体を支えるようにして後向きに腰をおろしたところ、その左手第四指がパイプの部分とデッキチェアーの角度調節部分パイプとの間にはさまり、その先端部約一センチメートルが切断され、左手第四指第一指関節切断の傷害を受けたことから、デパート経営者に対し、工作物責任に基づく損害賠償を請求した事案である。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 「土地の工作物」とは本来地上地下に人工を加えて作った物ないしはこれと一体をなすものであり、建物内の工作物も、建物の一部としてこれと一体をなす内部設備等は「土地の工作物」というを妨げないが、このような内部設備を除いて建物内に設置してある工作物については、その定着性を考慮し、さらに民法第七一七条の依拠する危険責任の法理から当該工作物それ自体の人に及す危険性の有無をも総合して「土地の工作物」に該当するか否かを決すべきであるとし、
② 本件デッキチェアーは
ア デパートの顧客に対するサービスとしてその休憩用に床面に固定されることなく備え付けられたものであり、簡単に折りたたむことができその運搬も容易であること
イ 本件デッキチェアーと同種のデッキチェアーに関し傷害事故等なんらの事故も発生したこともなく、販売されたデッキチェアーについて苦情や事故は全く報告されていないこと
からすれば、本件デッキチェアーはその設置個所との定着性は極めて稀薄であるうえ、人に危険を及す性質を有するものとは言えず、したがって民法第七一七条に
いわゆる「土地の工作物」には該当しないと認定した。
③ また、本件デッキチェアーを利用する顧客に対し、これが安全利用方法につき特別の指導員を立ち会わせて説明し或いは掲示板、説明書をもって周知せしめるまでの義務はないものというべく、したがって被告が右のような処置を採らなかったからといってこの点につき過失があるとはいえないとした。
④ 以上から、原告の請求を棄却したところである。
事件番号・判例時報 |
昭和46年ワ4147
298号390頁
704号70頁 |
裁判年月日 |
昭和47年12月11日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
東京地裁 |
判示 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
利用客 |
天候等の状況 |
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ID:173[mid:16]