事故事例の詳細
事故概要
旅館の宿泊者が、窓の他には換気設備のない四畳半一間の本件客室において、煙突の付いていないガスストーブを点火したまま就寝し、翌朝一酸化炭素中毒に罹患した状態で発見され、その後死亡した。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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不完全燃焼・換気不足 |
一酸化炭素中毒 |
その他(火傷・感電・溺水・中毒など) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
ホテル・旅館 |
場所 |
その他室内 |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
死亡 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 建物所有者・占有者(旅館主)
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
ア 本件客室は四畳半で前記の窓および出入口があるほか、特に換気のための設備はないにもかかわらず、暖房用として煙突のついていない本件ガスストーブが備えられていたこと
イ 煙突の付いていないガスストーブが室内の空気を汚染しやすく、適宜換気が必要であることは公知の事実であるが、ストーブが使用されるような時期、即ち寒気の厳しい時に窓を開放し、直接外気を採り入れることを宿泊客に期待することは酷であること
ウ 不特定多数の客の宿泊を業とする者としては、窓に代わるべき何らかの換気設備を備え、宿泊客の生命又は身体に危害を及ぼすことのないよう万全の措置をとるべきであるにもかかわらず、有効な換気のための設備を欠いていたこと
から、本件客室は、その設置・保存に瑕疵がある。
- 過失相殺
- 宿泊客は、あえて旅館側から一々注意されるまでもなく、自己の生命・身体に危害を及ぼすことのないようその取扱に十分注意する義務があるものというべきであるとして、被害者の過失を認め、過失相殺(7割)をした。
判例の解説
- 事案の概要
- 旅館の宿泊者が、窓の他には換気設備のない四畳半一間の本件客室において、煙突の付いていないガスストーブを点火したまま就寝し、翌朝一酸化炭素中毒に罹患した状態で発見され、その後死亡した。被害者の遺族が建物少雨者である旅館主に対し、工作物責任に基づく損害賠償を請求した事案である。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 不法行為の成否の問題として本件客室の瑕疵の有無を考えるにあたっては、取締法令(建築基準法・旅館業法)所定の基準を満たしているか否かとは一応離れて、安全性の面からより具体的に「その物が本来備えているべき設備を欠く」か否かについて検討されなければならないとした上で、
② 本件では、
ア 本件客室は四畳半で前記の窓および出入口があるほか、特に換気のための設備
はないにもかかわらず、暖房用として煙突のついていない本件ガスストーブが備えられていたこと
イ 煙突の付いていないガスストーブが室内の空気を汚染しやすく、適宜換気が必要であることは公知の事実であるが、ストーブが使用されるような時期、即ち寒気の厳しい時に窓を開放し、直接外気を採り入れることを宿泊客に期待することは酷であること
ウ 不特定多数の客の宿泊を業とする者としては、窓に代わるべき何らかの換気設備を備え、宿泊客の生命又は身体に危害を及ぼすことのないよう万全の措置をとるべきであるにもかかわらず、有効な換気のための設備を欠いていたこと
から、本件客室は、その設置・保存に瑕疵があったと判断した。
③ ただし、宿泊客は、あえて旅館側から一々注意されるまでもなく、自己の生命・身体に危害を及ぼすことのないようその取扱に十分注意する義務があるものというべきであるとして、被害者の過失を認め、過失相殺(7割)をした。
事件番号・判例時報 |
昭和49年(ワ)487
845号94頁 |
裁判年月日 |
昭和51年8月30日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
札幌地裁 |
判示 |
一部認容 一部棄却 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
利用客 |
天候等の状況 |
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ID:179[mid:24]