事故事例の詳細
事故概要
アパートの賃借人が一酸化中毒で死亡した。
本件湯沸器のコントロールボックスの制御基盤のはんだ付け部分にはんだ割れが生じたことにより通電しなくなり,そのため,本件湯沸器に内蔵されている強制排気ファンが,その回転を停止した状態になっていたこと、さらに本件湯沸器については,何者かによってコントロールボックスの端子台に追加配線を取り付ける改造が施されておりはんだ割れによる不通電にもかかわらず,点火燃焼が可能な状況になっていたこと、その結果,本件湯沸器は,強制排気ファンが停止したにもかかわらず,不完全燃焼を続け,一酸化炭素を発生させた。
この事故の事故パターン
|
事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
|
不完全燃焼・換気不足 |
一酸化炭素中毒 |
その他(火傷・感電・溺水・中毒など) |
|
事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
集合住宅の共有部等 |
場所 |
水回り(キッチン・トイレ・風呂) |
建築部位 |
その他 |
障害程度 |
死亡 |
|
|
判例の詳細
- 責任の所在
- ガスの販売業者
賃貸人
- 瑕疵・過失の有無
- ガス機器販売業者に過失有り。
ガス機器の販売事業者に対しては、
ア 排気扇にはこれが停止した場合に燃焼器への液化石油ガスの供給を自動的に遮断する装置が設けられていることについての実質的な点検・調査義務があったにもかかわらずしていないこと
イ 点検調査の際、本件湯沸器の電源を遮断することで,安全装置が働かないことを容易に発見することができたにもかかわらず、発見しえなかったこと
に過失がある。
- その他
- 賃貸人については、一般的な安全配慮義務は認められるとしつつ、専門家に点検を依頼し、その結果器具の安全性に疑問が呈せられたような場合以外は、買い替え等の義務は負わないとして、本件では義務違反ないし過失はないとした。
判例の解説
- 事案の概要
- アパートの賃借人が一酸化中毒で死亡した事故に関して,死亡者の相続人が,ガス器具(湯沸器)の販売業者,ガスの販売事業者,ガス器具の設置業者,及びアパートの賃貸人に対し,不法行為もしくは債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案である。
なお、本件湯沸器のコントロールボックスの制御基盤のはんだ付け部分にはんだ割れが生じたことにより通電しなくなり,そのため,本件湯沸器に内蔵されている強制排気ファンが,その回転を停止した状態になっていたこと、さらに本件湯沸器については,何者かによってコントロールボックスの端子台に追加配線を取り付ける改造が施されておりはんだ割れによる不通電にもかかわらず,点火燃焼が可能な状況になっていたこと、その結果,本件湯沸器は,強制排気ファンが停止したにもかかわらず,不完全燃焼を続け,一酸化炭素を発生させたことなどが事実関係として認定されている。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① ガス器具販売会社については、
ア はんだ付け部分にはんだ割れが生じたことをもって,本件湯沸器の販売時の瑕疵であると認めることはできないし、販売当時に追加配線が施されたものとは認められず,販売当時に右のような追加配線が施工されることが予見できたとも認められないから,追加配線がされたことをもって,本件湯沸器の販売当時の瑕疵であるということはできず、
イ また、講習会等で本件のような改造行為の危険性につき注意を喚起するとともに,これを行わないように指導し,さらに,監督官庁たる通産省,社団法人日本ガス石油機器工業会,高圧ガス保安協会等を通じて,広報活動を行っているのであり,同種事故発生後になすべき注意義務を怠ったとは認めがたいとして、
販売会社の責任は否定した。
② ガスの販売事業者に対しては、
ア 排気扇にはこれが停止した場合に燃焼器への液化石油ガスの供給を自動的に遮断する装置が設けられていることについての実質的な点検・調査義務があったにもかかわらずしていないこと
イ 点検調査の際、本件湯沸器の電源を遮断することで,安全装置が働かないことを容易に発見することができたにもかかわらず、発見しえなかったこと
に過失があるとして、損害賠償責任を認めた。
③ ガス器具の設置業者については、設置当時、器具に瑕疵があったとは認められないとして、損害賠償責任は否定した。
④ 賃貸人については、一般論としては安全配慮義務)があるとしつつ、賃貸建物に設置したガス湯沸器の安全性については,それが極めて技術的,専門的判断を要する事柄であることから,専門的なガス器具の保守・修理業者に点検を依頼し,その結果,その器具の安全性に疑問を呈されたような場合以外は、当然にガス器具を買い替えなければならない義務があるとはいえないとして、賠償責任を否定した。
事件番号・判例時報 |
平成10年(ネ)319
最高裁HP |
裁判年月日 |
平成14年2月7日 |
事件名 |
損害賠償請求控訴事件 |
裁判所名・部 |
札幌高裁 |
判示 |
一部容認 一部棄却 |
|
原審事件番号 |
|
原審裁判所名 |
|
原審結果 |
|
被害者 |
住民 |
天候等の状況 |
|
|
ID:304[mid:73]