事故事例の詳細

事故概要

本件は、ホテルの宿泊客が同ホテルのバルコニーから転落して死亡した事故に関し、被害者の遺族が、被害者の宿泊した客室の窓ないしその外部に隣接しているバルコニーに通常有すべき安全性を欠く瑕疵があったために同事故が発生したとして、ホテル経営者である被告に対し、工作物責任及び宿泊契約上の安全配慮義務違反の債務不履行に基づき損害賠償を請求をした事案である。 



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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 ホテル・旅館  
場所 バルコニー・屋上・その他高所  
建築部位 その他  
障害程度 死亡  
事故にあった方 年齢  
性別 男性 

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
瑕疵あり
・建築基準法に定める柵の高さを満たしておらず、これに代替する安全確保措置がとられていないこと
過失相殺
7割
被害者は、バルコニーが避難場所として設置されているにもかかわらず、意図的に、窓からバルコニーに立ち入り、誤ってバランスを崩して転落したこと

判例の解説

事案の概要
ホテルの宿泊客が同ホテルのバルコニー(以下「本件バルコニー」という。)から転落して死亡したことから、被害者の遺族である原告らが、被害者の宿泊した客室の窓及び外部に隣接しているバルコニーに通常有すべき安全性を欠く瑕疵があったために同事故が発生したとして、ホテル経営者である被告に対し、工作物責任及び宿泊契約上の安全配慮義務違反の債務不履行に基づき損害賠償を請求した事案である。
裁判では、本件バルコニーには、本件客室と反対側の端に高さ72cmの金属製の柵が設けられており、同柵の他には本件バルコニーからの転落を防止するための施設は設けられていないことが認定されている。
裁判所の判断
1 民法717条1項にいう「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があること」とは、土地工作物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、同安全性を欠くか否かは、その工作物の構造、本来の用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断すべきものである。そして、当該工作物の通常有すべき安全性の有無は、その本来の用法に従った使用を前提とした上で、何らかの危険発生の可能性があるか否かによって決せられるべきものというべきである。

2 バルコニーに設置されている柵が、非常時に宿泊客の一時的避難場所として設置されたバルコニーにも適用される建築基準法施行令126条1項所定の柵の高さを確保していない場合には、これに代替し得る転落防止のための設備が備えられているなどの特段の事情がない限り、非常時に避難場所又は避難経路として利用するに際し転落する危険性が認められ、通常有すべき安全性を欠いているというべきである。

3 本件バルコニーの柵の高さが72cmにとどまり、建築基準法施行令126条1項の規定する基準(1.1m)よりも相当低く、本件バルコニーの通路幅等の客観的構造その他本件全証拠によっても、上記特段の事情があるとは認められない。よって本件バルコニーは、非常時に宿泊客が避難場所又は避難経路として利用するという本来の用法に照らして、その構造上、宿泊客が転落する事態を防ぐための通常有すべき安全性を欠いていたというべきであるから、本件バルコニーの設置又は保存に瑕疵があると認められる。

4 被害者は、意図的に、本件窓を全開して同窓から本件バルコニーに立ち入り、同場所で誤ってバランスを崩して本件バルコニーの柵の外側に重心が移動して地上に転落したものと認められるが、本件バルコニーは一時避難場所又は避難経路として人が立ち入ること自体は想定されていたことからすれば、本件ホテルの設置又は保存の瑕疵と被害者の死亡との間には、因果関係が認められる。ただし、被害者には、自ら転落の危険がある場所に接近し、同場所でバランスを崩したという点で過失が認められ、被害者の過失割合は7割と認めるのが相当である。
本判決のポイント
避難時に使用されることが想定されている設備が避難時以外に使用されたときに事故が生じた場合であっても、人が立ち入ることが想定されている以上、人が立ち入った場合に通常有すべき安全性を欠いていれば、本来の用法を前提としたときでも瑕疵が存在するとして、工作物責任が認められることに留意すべきである。
事件番号・判例時報 令和3年(ワ)第8866号 
裁判年月日 2023/2/27 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 東京地方裁判所 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2073[mid:]