事故事例の詳細

事故概要

公営住宅に居住していた者(当時1歳)が、居室内のベッドから窓の外に出て、自宅6階バルコニー(避難路としての使用を想定)の柵のすき間から落下して死亡した。

 バルコニーに出る窓には、窓の腰壁が床面から約七三・五センチメートルあり、その上に約一六・六センチメートルの間隔で、約三・四センチメートルのパイプが二本渡してあって、上端の高さで床面より一一四センチメートルの横さん型式の手すりが設置されている。 



この事故の事故パターン

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事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 集合住宅の共有部等  
場所 バルコニー・屋上・その他高所  
建築部位 手すり  
障害程度 死亡  
事故にあった方 年齢  
性別  

判例の詳細

責任の所在


建物設計・監理者
瑕疵・過失の有無
瑕疵なし 

 公営住宅に居住していた者(当時1歳)が、居室内のベッドから窓の外に出て、自宅6階バルコニー(避難路としての使用を想定)の柵のすき間から落下して死亡した。

 バルコニーに出る窓には、窓の腰壁が床面から約七三・五センチメートルあり、その上に約一六・六センチメートルの間隔で、約三・四センチメートルのパイプが二本渡してあって、上端の高さで床面より一一四センチメートルの横さん型式の手すりが設置されている。

判例の解説

事案の概要
公営住宅に居住していた者(当時1歳)が、居室内のベッドから窓の外に出て、自宅6階バルコニー(避難路としての使用を想定)の柵のすき間から落下して死亡した事故が発生した。被害者遺族が、公営住宅を設置、管理する市に対し営造物責任に基づき、また、この公営住宅を設計、監理した会社に対し一般不法行為に基づき、損害賠償を請求した事案である。

なお、バルコニーに出る窓には、窓の腰壁が床面から約七三・五センチメートルあり、その上に約一六・六センチメートルの間隔で、約三・四センチメートルのパイプが二本渡してあって、上端の高さで床面より一一四センチメートルの横さん型式の手すりが設置されている。
裁判所の判断
裁判所は、

① 営造物が通常有すべき安全性とは、当該営造物の構造だけではなく、その用法、場所的環境及び利用状況等の諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきであり、本件手すり等が建設基準に反しないからといって、直ちに本件団地が通常有すべき安全性を有していたものということはできないとした上で、

② 公営住宅は、

 ア 住居として、その利用が日常に密着し、かつその利用関係が長期にわたって継続することから、世帯構成や入居者の趣向等によって異なる利用の多様性に応える必要があり、また、居住の快適性や便宜性といった要請を満たす必要もある(建設基準五条参照)こと

 イ 住居としての性格上各住戸の利用は排他的で、入居者がどのような家財道具を持ち込み、どのように利用するかは千差万別で、その実態を外部から把握することはできず、日常の管理についても居住者に委ねざるを得ない部分がほとんどであること。

 ウ 公営住宅と入居者との関係か密接かつ継続的であることから、入居者の側において危険を予知し防止措置を講ずることもある程度期待することができること

から、利用の態様につき入居者の裁量が認められ、かつその日常の管理が入居者に委ね

られているという特質に鑑みれば、公営住宅の設置管理にあたっては、通常の用法から

は容易に予期し得ない危険が生じる場合や、予期された危険を防止するため日常生活の

場としての住居の利用が著しく防げられたり、その防止に加重な負担を強られるなどの事情がない限り、入居者の危険回避行動を期待し、これを前提とすることは許容されていると判断した。

③ その上で、本件手すり等につき、

 ア 建築基準に該当していたこと

 イ 日常生活の場として居住の多様性や快適性を充たす必要があったこと

 ウ 落下防止手すりは、公営住宅において決して特殊なものではなく、同種のものが他の住宅でも少なからず用いられていること

 エ べツドが足がかりとなって本件現場に落下する危険の存することを被害者側も認識し得、これに対し、日常生活に支障のない形で足がかりとならないようベツドの置き方等を工夫する余地もあったと認められること

 オ 公営住宅の設置、設計にあたり窓下に足がかりとなるベツドを配置することまで考慮した危険防止措置が要請されるとはいえないこと

から、住居内の腰壁の手すりとして通常有すべき安全性を欠いていたものとは認められないとした。
事件番号・判例時報 平成9年(ワ)1169

1696号131頁 
裁判年月日 平成11年8月27日 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 熊本地裁 
判示 棄却 
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者 入居者 
天候等の状況  
ID:302[mid:71]