事故事例の詳細

事故概要

本件は、店舗の来店者が、同店舗内の男女兼用トイレ内の10cm程度の段差に足をとられて転倒し、右大腿骨頚部内側骨折の傷害を負ったことから、本件トイレに設置上の瑕疵があり、また、同店舗の店長に過失があるとして、店舗経営者に対し、工作物責任または使用者責任に基づき損害賠償を請求した事案である 



この事故の事故パターン

  事故のきっかけ 事故の過程 結果 詳細と留意点
  一段の段差  つまづく  転倒(床の上で転ぶこと)  事故パターンの詳細と留意点を見る

事故概要詳細

情報ソース 裁判判例 
建物用途 店舗・娯楽施設等  
場所 水回り(キッチン・トイレ・風呂)  
建築部位 段差のある床  
障害程度 重度のケガ  
事故にあった方 年齢 67歳 
性別 女性 

判例の詳細

責任の所在
瑕疵・過失の有無
瑕疵あり・過失なし
・本件トイレは、その構造や利用者の心理等の要因により、利用者が本件段差を認識できない可能性も十分に認められること
・本件店舗は老若男女が訪れる施設であること
過失相殺
過失相殺  5割
・本件トイレでは、約1年半余りの間に、本件事故と同程度の転倒事故が起こらなかったこと
・被害者は本件トイレ内に入る際に足下の注意がおろそかであったきらいもあること

判例の解説

事案の概要
店舗の来店者(67歳・女性)が、同店舗内の男女兼用トイレ(以下「本件トイレ」という。)内で転倒し(以下「本件事故」という。)、右大腿骨頚部内側骨折の傷害を負ったことから、店舗経営者に対し、本件トイレには設置上の瑕疵があり、その従業員である同店店長には過失があるとして、工作物責任または使用者責任に基づき損害賠償を請求した事案である。
裁判所の判断
1 本件トイレの利用者は、トイレ扉を開けて便器等で用を足すまでには、約10cmの垂直の段差(以下「本件段差」という。)を登ってトイレ床に上がる必要があるところ、本件段差について注意書き等はなく、本件店舗は老若男女が訪れる施設であることなどからすれば、本件トイレは、その構造や利用者の心理等の要因により、利用者が本件段差を認識できない可能性も十分に認められるというべきであり、10cm程度の段差であっても、不意に足を取られて転倒すれば重大な傷害結果を伴う事故に発展する危険性は優に認められる。

2 本件トイレは、本件事故当時、客観的にみて、土地の工作物が通常備えているべき安全性を欠いており、設置に瑕疵があるというべきであるから、店舗経営者としては、本件店舗がバリアフリー法等の適用がないものであったとしても、トイレの利用者が段差で転倒し傷害を負う結果とならないよう、トイレ扉等本件トイレ利用者の目に入る場所に本件段差についての注意書きを張ったりするなどすべきであったにもかかわらず、これをしなかったのであるから、被告である店舗経営者には工作物責任が認められる。


3 ただし、本件トイレでは、約1年半余りの間に、本件事故と同程度の転倒事故が起こらなかったこと、原告は本件トイレ内に入る際に足下の注意がおろそかであったきらいもあることからすれば、原告の過失割合は5割と認めるのが相当である。


4 なお、本件トイレが安全性を欠く構造をしていたとはいえ、開店から1年半余りの間に、本件事故と同程度の転倒事故が起こらなかったことなどに鑑みれば、本件トイレ内の本件段差について注意喚起をするような注意書きを掲示せず、トイレの場所を聞いた原告に対して注意喚起をしなかった店長には不法行為が成立するとはいえず、よって店舗経営者には使用者責任は生じない。
本判決のポイント
バリアフリー法の適用の有無にかかわらず、店舗内のトイレ内に10cm程度の段差が存在し、その点に注意喚起等がなされていない場合には、利用者の属性や実際の利用の在り方に照らし、通常有すべき安全性が欠如している(瑕疵あり)と判断されていることに留意する必要がある。
事件番号・判例時報 令和2年(ワ)第2913号 
裁判年月日 2022/1/18 
事件名 損害賠償請求事件 
裁判所名・部 横浜地方裁判所判決 
判示  
原審事件番号  
原審裁判所名  
原審結果  
被害者  
天候等の状況  
ID:2079[mid:]