事故事例の詳細
事故概要
温泉旅館において自動エレベーターを5階で利用しようと備え付けのボタンを押し戸が開くのを待って身体を内部に乗り入れたところエレベーターのかごがなく、14メートル下の地下室に落下して死亡した事故である。本件エレベーターの施錠装置は摩滅によって完全ではない状態であった。ただしエレベーターの扉が開いたのは、被害者らが酔って激しく戸をたたくなどの外力を加えたことによる。)
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
詳細と留意点 |
1 |
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乗り場から昇降路に落ちる |
墜落 |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
ホテル・旅館 |
場所 |
その他場所 |
建築部位 |
エレベーター |
障害程度 |
死亡 |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 所有者に工作物責任を認めた。
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり。
・一般事務所用ビルとは異なり、酩酊した客が深夜エレベーターの戸を無理やりこじあけて利用する事態が生じることは予測しえた。
・本件5階エレベーターは他の階に比べ相当利用頻度が高い。
・したがって、本件エレベーター装置の異常の有無につき絶えず点検整備すべき義務がある。
・本件装置が他の階よりも機能低下していた。
- 過失相殺
- 被害者側に重大な過失あり(過失割合は明記されていない)
判例の解説
- 事案の概要
- 温泉旅館において自動エレベーターを5階で利用しようと備え付けのボタンを押し戸が開くのを待って進退を内部に乗り入れたところエレベーターのかごがなく、14メートル下の地下室に落下して死亡した事故である。本件エレベーターの施錠装置は摩滅によって完全ではない状態であった。ただしエレベーターの扉が開いたのは、被害者らが酔って激しく戸をたたくなどの外力を加えたことによる。
- 裁判所の判断
- 被害者側にも重大な過失があったことは否定できないが、本件エレベーターは一般事務所ビル等に設置された場合と異なり、有名な温泉地の旅館に設備されたものでで、酩酊した客が深夜に戸を無理やりこじ開けて利用する事態が生ずるおそれがあることは十分に予想でき、かつ予想すべきであったことから、このような事態に対処するたえに戸の開閉装置が常に万全であるよう保守すべき義務があったところ、施錠装置が不完全であることは工作物の保存(保守)に瑕疵があったといわざるを得ないとして、建物所有者に損害賠償責任を認めた。
- 本判決のポイント
- 施設設備の瑕疵の有無は、利用が予想される者の行動特性も踏まえて判断されるとしている点に注意が必要である。
事件番号・判例時報 |
昭和42(ワ)4194
215-168 |
裁判年月日 |
昭和42年9月28日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
東京地裁 |
判示 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
旅館宿泊客 |
天候等の状況 |
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ID:1212[mid:9]