事故事例の詳細
事故概要
介護老人保健施設に入所していた当時95歳の老人女性が,自室のポータブルトイレ中の排泄物を捨てに行こうとして自ら汚物処理場に赴いた際に,仕切りに足を
引っかけて転倒し,負傷した。 本件トイレ内に本件処理場が併設されているところ,そこでは排泄物を流すだけでなく,その容器を洗うこともできたこと、本件仕切りは,本件処理場内の汚水等が処理場外に流出しないための仕切りであり,本件処理場に出入りするためには,これを跨がなくてはならない構造になっていた。
この事故の事故パターン
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事故のきっかけ |
事故の過程 |
結果 |
詳細と留意点 |
1 |
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一段の段差 |
つまづく |
転倒(床の上で転ぶこと) |
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事故概要詳細
情報ソース |
裁判判例 |
建物用途 |
公共施設 |
場所 |
水回り(キッチン・トイレ・風呂) |
建築部位 |
段差のある床 |
障害程度 |
重度のケガ |
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判例の詳細
- 責任の所在
- 建物所有者・占有者(施設経営者)
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
ア 本件施設は,身体機能の劣った状態にある要介護老人の入所施設であるから,その特質上,入所者の移動ないし施設利用等に際して,身体上の危険が生じないような建物構造・設備構造が特に求められていると判断した上で、
イ 現に入所者が出入りすることがある本件処理場の出入口に本件仕切りが存在するところ,その構造は,下肢の機能の低下している要介護老人の出入りに際して転倒等の危険を生じさせる形状の設備であると認定し、
工作物の設置・保存に瑕疵がある。
- その他
- あわせて介護契約上の債務不履行責任も認められている。
判例の解説
- 事案の概要
- 介護老人保健施設に入所していた当時95歳の老人女性が,自室のポータブルトイレ中の排泄物を捨てに行こうとして自ら汚物処理場に赴いた際に,仕切りに足を引っかけて転倒し,負傷した事故が発生した。被害者が、施設を経営する法人に対し,債務不履行又は工作物責任に基づき損害賠償を請求した事案である。
なお、本件トイレ内に本件処理場が併設されているところ,そこでは排泄物を流すだけでなく,その容器を洗うこともできたこと、本件仕切りは,本件処理場内の汚水等が処理場外に流出しないための仕切りであり,本件処理場に出入りするためには,これを跨がなくてはならない構造になっていたことなどが認定されている。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 債務不履行責任については、
ア 施設経営者には、介護ケアーサービスの内容として入所者のポータブルトイレの清掃を定時に行うべき義務があったこと,
イ 本件事故当日,これがなされなかったこと,そのため原告がこれを自ら捨てようとして,本件処理場に行った結果,本件事故が発生したことが認められること
から、契約上の債務不履行責任を負うとした。
② また、工作物責任については、
ア 本件施設は,身体機能の劣った状態にある要介護老人の入所施設であるから,その特質上,入所者の移動ないし施設利用等に際して,身体上の危険が生じないような建物構造・設備構造が特に求められていると判断した上で、
イ 現に入所者が出入りすることがある本件処理場の出入口に本件仕切りが存在するところ,その構造は,下肢の機能の低下している要介護老人の出入りに際して転倒等の危険を生じさせる形状の設備であると認定し、
工作物の設置・保存に瑕疵があり、工作物責任を負うとした。
事件番号・判例時報 |
最高裁HP
平成14(ワ)1158 |
裁判年月日 |
平成15年6月3日 |
事件名 |
損害賠償請求事件 |
裁判所名・部 |
福島地裁白河支部 |
判示 |
一部認容
一部棄却 |
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原審事件番号 |
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原審裁判所名 |
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原審結果 |
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被害者 |
入所者 |
天候等の状況 |
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ID:312[mid:85]